健康的で快適な空間
ところが、どれがホンモノか、見極めるのは難しい。
そこで、事務所建設にご協力いただいた第1人者たちの
こだわりの視点をお届けします。
【出席】
相根昭典 一級建築士
(株式会社アンビエックス代表、エコ建築の第1人者)
可能な限りケミカルフリー(有害化学物質を排除)の住宅を造る。
また、基礎を重視した耐震性抜群の建物を、自分で考案した止め金具などを使って建てている。
新事務所の設計を担当。
木村 司 木村木材工業(株)代表取締役
無垢材、造作材、注文材、窓枠、サッシ額縁、ドア枠、押入材を製造販売。
小若編集長に無垢材を勧め、新事務所にふさわしい木材を調達してくれた。
山賀康弘 一級建築士
(食品と暮らしの安全基金の建築顧問)
事務所建設に当たっては、打ち合わせから建設完了まで建築主側の相談役として助言・現場監理として活躍。
「最高の建築」へ尽力する。
小若順一 月刊誌『食品と暮らしの安全』編集長/食品と暮らしの安全代表
東海地震で浜岡原発が崩壊したら、首都圏まで放射能で汚染されることを知り、事務所移転を企画した。
●冬も暖かいフローリング
小若 木村さんには打ち合わせのときから参加していただきお知恵を出していただきました。
木村 木を扱う者として、室内から木が見えるように造られていることが非常にうれしいです。内装が無垢の木、貝てきパウダーなど調湿作用のあるもので全部まとまっていて、素晴らしいですね。
今は室内から木が見えない使い方が非常に多いです。マンションの建築現場に行くと、ビニールクロスと複合フローリング(合板などを基材とし、表面に化粧材を張ったもの)、そして、窓枠やドア枠にはプラスチックシートを貼ったシートラッピング材をよく見かけます。
木があるとしたら押入れの中ぐらいです。そういう現場が日常の仕事ですから、正反対の世界でした。
相根 しかも、木材は、すべて防カビ処理などがされてない、素のままの木です。
小若 埼玉県産材は高くて使えませんでしたが、群馬県の木なら地域は同じなので、良かったと思っています。
木村 関東の木ですから。
小若 塗装も「快手木生活」(高純度ワセリン)をスタッフ全員で塗りました。
木村 そのようにして使っていただくことに有難さを覚えますね。
冬になると、この木の床のよさがもっと分かるでしょう。普通の事務所の床は下からかなり冷えますね。それがないはずです。木は暖かいから。
相根 確かにそうですね。京都の冬は底冷えで有名ですが、お客さんのお宅を訪ねたところ、玄関に入った途端、「相根さん、暖かいよ」と挨拶代わりに言われました。靴下3枚はいていた女の子がエアコンしか使わないのにスリッパも履かず、素足です。それくらい違います。
小若 冬が楽しみですね。
●夏にも冬にも快適な断熱材
相根 断熱材も木と相性がいいウールを使っています。ウールは湿気を吸う容量がとても大きい。しかも30%水分を含んでも表面はさらさらで、すぐ放湿もしてくれます。
夏などは、かえって窓を閉めていたほうがいいくらいです。水分を吸収してくれる素材ばかりなので、熱容量も大きく、涼しい温度を保ってくれます。
真夏でも午前中は、涼しい気温を保ってくれます。人が大勢入って、パソコンなど機械が動き出してから冷房をつければいいはずです。
断熱もよく効いているのでエアコンは通常の半分の設置しかしていません。
小若 大量に電気を使わないでも、健康的で快適な空間を作れることが本当のエコ住宅ですね。この事務所から、その住み心地を発信していきたいと思います。
●窓の断熱はペアガラスの障子
窓ガラスはもちろんペアガラス。そこに、さらに障子を入れました。
効果はてきめん!夏の暑い陽射しをさえぎってくれます。
3階で、壁の中の断熱材が見られるようにしました。
●床・壁・戸には『快手木生活』
スタッフ総出で塗布。木目がきれいになり、手ざわりも良くなるので、楽しい作業でした。
●新事務所は窓枠も無垢材
マンションなどでは木目を印刷したプラスチックシートを貼ったシートラッピング材(左下写真)を使用することが多いのです。
2007年9月1日発行 No.221より