1月30日に基礎工事開始
●内輪で地鎮祭
新事務所着工の集いを、建築確認申請書の審査が終わった1月29日に、小若編集長ほか関係者6人で行いました。
敷地の中央と四隅に日本酒を瓶から注ぎ、波の花をまき、地鎮祭(とこしずめのまつり)の文言を参列者で斉唱し、これから始まる工事の安全と無事を誓いました。
そして、建築確認済証が交付になった翌30日から基礎工事に入りました。
基礎は、新事務所より少し広い範囲の土を掘り下げてつくります。
当初は、基礎全体を2.15mまで掘り下げ、一部を地下倉庫にすることにしていましたが、費用が高すぎました。
2m以上掘り下げるときには、土砂崩れを予防する対策が法令によって義務付けられています。この費用と、土を運び出して捨てる費用がかさむので、全体を60cm掘り下げてつくることに変更しました。
地下倉庫の面積も30%小さくし、10cm浅くしました。
この2つの変更で、法令から開放され、掘り出して外へ運び出して捨てる量も約70%少なくなったのです。
●基礎工事が始まる
待機していた工事用機資材が運び込まれ基礎工事が始まりました。
図面に従い建物の位置を現地に割り付け、道路や隣地との関係が図面通りかどうか寸法を測定し、チェックされ、それからすぐ地面の掘削にかかりました。
新事務所は2度も測量済みなので、問題はありませんでしたが、ときには入手した図面と実際の土地が不一致になることもあります。
これから土地を購入して建物をつくる場合は、契約の前に、必ず正確な測量図の有無を確認してください。
新事務所の基礎は、建物の下を全面で支える「ベタ基礎」方式。
広さは東西15m、南北6.5mです。
現地は40cmほど盛土がしてあったので、その分深く掘ることになります。そのまま掘ると土砂崩れが発生するかもしれないので、掘る周囲に崩れ防止の簡易対策を施しました。
建物の外周に沿ってショベルカーで1m堀り下げ、2〜3mの溝ができるたびに外部側の段差にコンクリート型枠用のパネル(コンパネ)を当て、コンパネの内側に5cmの丸パイプを1m間隔で杭として打ち込み、コンパネを押さえ込んで土砂崩れを防止していきました。
こうして周囲に支えを構築しながら、目的の深さまで全面掘削を行いました。
●地下倉庫の掘削
それから、中央の地下倉庫の所の基礎の掘削を行いました。
地下倉庫の大きさは東西4m、南北4.3m、深さは1.5mです。一気に2mを超えて掘るのではなく、まずベタ基礎の掘削で60cm 下げ、そこに平場があり、改めて1.5mの深さになっています。
地下倉庫部分は、基礎をつくると同時に、倉庫の壁と建物全体の基礎をつくることになるので難しい工事です。
0.9m間隔で支えの杭を垂直に打ち込み、コンパネを留めて、掘り上げた土をコンパネの外側に埋め戻します。
現地の土は関東ロームで、1度掘り起こすと強度が落ちます。そこで、地盤改良材を土に混ぜ、この土を突き固めながら埋め戻しを行い、倉庫の外壁の外側の型枠を兼ねた土砂崩れ防止のための簡易壁面をつくりました。
前回、深さが2種類ある基礎の工事は難しいと書きましたが、まさにこのようなことで、深い基礎の地盤をつくるとき、浅い基礎の地盤を乱したので、深い基礎と浅い基礎の地盤が接する付近を地盤改良材を用いて補強したわけです。
その上で、基礎地盤の表層全面を30 cm地盤改良しました。
倉庫の基礎だけは設計図どおり、石を入れた「割栗地業」となっています。
●捨てコンクリートの打ち込み
地盤改良が済むと、その上に絶縁シートを敷き込んで土と縁を切る「捨てコンクリート」を2月2日に打ち込みました。
捨てコンクリートとは悲しい呼び名ですが、地盤面の細かい凸凹は完全に取り去ることはできないため、平均5cmの厚さにコンクリートを打ち込み、水平に正確に設計図に指定された高さに仕上げます。
捨てコンクリートの正確さが、次工程の基礎の組立作業の精度を高めます。その結果、建物全体の精度が確保されるので、出発点として重要な工事なのです。
山賀康弘(一級建築士)
2007年3月1日発行 No.215より