本物のエコロジー建築とは?

エコ住宅、我こそはホンモノと、さまざまな論が展開。
ところが、どれがホンモノか、見極めるのは難しい。
そこで、事務所建設にご協力いただいた第1人者たちの
こだわりの視点をお届けします。

【出席】
相根昭典 一級建築士
株式会社アンビエックス代表、エコ建築の第1人者)
可能な限りケミカルフリー(有害化学物質を排除)の住宅を造る。
また、基礎を重視した耐震性抜群の建物を、自分で考案した止め金具などを使って建てている。
新事務所の設計を担当。

木村 司 木村木材工業(株)代表取締役
無垢材、造作材、注文材、窓枠、サッシ額縁、ドア枠、押入材を製造販売。
小若編集長に無垢材を勧め、新事務所にふさわしい木材を調達してくれた。

山賀康弘 一級建築士
(食品と暮らしの安全基金の建築顧問)
事務所建設に当たっては、打ち合わせから建設完了まで建築主側の相談役として助言・現場監理として活躍。
「最高の建築」へ尽力する。

小若順一 月刊誌『食品と暮らしの安全』編集長/食品と暮らしの安全代表
東海地震で浜岡原発が崩壊したら、首都圏まで放射能で汚染されることを知り、事務所移転を企画した。

●東海地震の原発震災対策で
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小若 いい事務所ができました。皆さんには大変お世話になって、感謝しています。
そもそも事務所を移転しようと思い立ったのは、東海地震による原発震災に備えるためです。浜岡原発から煙が出たらすぐに逃げ出せるようにと、荒川を越えた埼玉県さいたま市を選びました。
その後、耐震偽装問題が起きて、丈夫な建物を造りたいと考えました。
それにしても、相根さんがこんなに基礎からしっかりした建物を造るとは…。驚きました。

事務所基礎

上:事務所の基礎
下:建設中んお一般的な住宅の基礎、コンクリートが割れている

一般的な基礎
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●堅く石にした基礎
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相根  阪神大震災後に被災地を訪れて、基礎が壊れたら終わりだと痛感しました。いくら建物がしっかりできていても、基礎が悪ければダメです。50年で壊れるような基礎なら価値がない。それどころか、今の一般的な建築の基礎では50年持たないかもしれないと、危惧しています。
私は鉄筋をきちんと入れて、コンクリートが石に戻るという思いで打ちます。
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山賀 なるほど、石灰石を砕いて作ったのがセメント。それを、「石に戻す」ですね。
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相根 コンクリートが堅く結晶化するために、入れる水を最低限にします。余分な水が入っていないので、水分が蒸発しても隙間が少なく、緻密に固まります。
一般的なコンクリートは、水分が多い「しゃぶしゃぶ」。やわらかいので、鉄筋と鉄筋の間隔が狭くても入っていきやすい。
しかし、水分を少なくしたコンクリートにしても、鉄筋の配置に気を配ってバイブレーター(振動機)を使用すれば、きちんと隅々まで入れることができますし、仕上がりのコンクリートの表面も、きれいになります。


ステンレス製パッキン

上:事務所に使ったステンレス製のパッキン
下:一般的なゴム製パッキン

一般的なパッキン
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大きなビス

Z金具
上:筋交いの木が土台についていない取り付け方。
一般的なZ金具を使った加重試験で木が割れた。
下:事務所にしようしている筋交い金具。
一般的なZ金具の約2倍の加重でも破損しなかった。

筋交い金具
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●揺れに強いシンプルな建物
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相根 緻密に打ったコンクリートは、防水しなくてもいいほど内側に水が入りにくくなります。しかし土に接しているので、やはりいくらか湿気を含んでしまいます。その湿気が、木の部分、建物本体に影響しないように、パッキンで土台と基礎を離します。
普通に使われているパッキン部分の製品は、硬質ゴムやプラスチックです。20年以上は持つといいますが、それから先、強度が落ちたら、家がダメになる原因になります。
われわれが使うのは、ステンレス製品。頼んで作ってもらったもので、硬質ゴムやプラスチックに比べると4倍以上の価格ですが、その意味はあります。

●耐震性が抜群の構造に
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山賀 この建物の補強金具はほとんどがステンレス製を使っていて、いいですね。
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相根 ステンレスは金属のなかでもさびにくく、長く持ちます。しかも、熱伝導率が小さいので、外気の気温による結露のリスクなども最小限に抑えられます。
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小若 一般的には、柱と筋交いを支える金具が細い柱に太い穴を開けて止められていますね。強度は大丈夫なのでしょうか。
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相根 柱と筋交いを支える普通の製品は、太いビスだけでなく、8cmぐらいのビスを8本とか、びっしり打ちます。すると木の筋を切ってしまうので、約1トンの力がかかるといわれる震度4〜5ぐらいの地震で、木が割れてしまいます。
もっとひどい例では、筋交いを切って金具で取り付けています。そのため筋交いが土台と梁にくっついていない。コンクリートと同じくらいある木の圧縮強度が生きていないのです。
そこで、土台の木と梁の木に筋交いの木がついて金具で止めるという特殊な金具を開発し、メーカーに作ってもらいました。
止めているのはボルト1〜2本ぐらいなので、建物が揺れても追随して動き、木と金具の強さが相乗効果で強くなる止め方をしています。
また、建物の形もシンプルなので、構造も2間(約3.6m)のピッチで統一できました。こういう建物は揺れにも強いのです。
この建物の耐震性は、今できる最高の技術で造られているといって過言ではないでしょう。

●木を乾かす構造
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小若 5寸柱を一部に使いましたが、4寸柱との組み合わせをどう考えればいいのでしょうか?
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相根 4寸柱だと壁に隠れます。5寸柱を使うことで、柱が見えるようにしました。
木が外に出ているのでいつも乾燥します。
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木村 乾燥した状態で使うことは、木を守る最適の条件です。
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相根 壁の中も、通気層を設けていつも乾燥するようにしています。
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小若 通気層は基礎にもありますね。
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相根 もちろん。たとえ大雨でも、基礎の湿気は上部の通気層に運ばれ、床下・壁内部・屋根裏の湿気とともに逃げるようになっています。
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小若 8畳の地下室に除湿乾燥機を入れて乾燥させているので、床下は乾いている方でしょう。だから、これからの建物の手入れとしては、外壁のガルバリウムを替えていくだけですね。
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相根 ガルバリウムは張替えでなくて、上に張ればいいので、ゴミになりません。
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山賀 張替えといっても、ステンレスのクギを使っているので、50年以上持ちますよ。
雨の当たるところは、軒の部分も含め、すべて金属でおおって、木材は雨風の当たる部分には露出していません。その意味で簡単には腐らないのが、この建物の特徴でしょうね。

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2007年8月1日発行 No.221より

国産材で気持ちいい家を(221号)>>

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