基本設計が決まる

道路から見た新事務所
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事務所の建設予定地で地盤調査をしたら、弱いところが見つかり、くい打ちの予算がないので、鉄筋コンクリートから木造に変えることになったと9月号でお知らせしました。
そのころ、基本設計の図面を見せてもらうと、建物の形は長方形の箱型でした。
単純な形だったので、小若編集長に尋ねると、「建物は、長方形の単純な形にしてほしい」と希望を述べていたことがわかりました。
(小若注:山賀さんから、単純な形の建物の方が地震に強いと、ずっと前から何度も聞いていて、昨年の耐震偽装事件のときにもそのことを確認していたので、「山賀流」で発注していたのです)

●単純な形は強くて安上がり

単純な形にすることには、大いに意味があります。
まず屋根の形が単純になり、雨漏りの危険性が少なくなります。
外壁に出っ張りやくぼみ、曲面がなければ、時間的に早く作れます。
場所によって階数を変えると、基礎にかかる重量が部分ごとに違ってくるので、将来、不等沈下する危険性があります。不等沈下によって建物に発生するゆがみは、故障の予備軍となります。
一般に建物の基礎は、地面を掘り下げて造ります。四角に掘り下げて平面にするだけなら、機械で簡単に掘ることができます。
もし、深さが2種類ある基礎の場合は、その境目が崩れないように、深い方から浅い方の地盤を支える必要があります。この工事は難しいことが多いのです。
基礎も上物も、単純な形にしておくと、強いだけでなく、工事もやりやすく、費用も経済的になります。

●木造の良さを強調

鉄筋コンクリートから木造に変えても、単純な形でいくことは変わりません。
木造だと建築コストが安くなり、計画道路の制約が外れるので、少し大きな建物になりました。間口が5.9m、奥行きが14.5mで、総3階建です。
基礎も、倉庫のあるところの深さに合わせ、全体を掘り下げる構造にしています。
これを地盤の方から言うと、表土をすべて取り除き、関東ローム層まで均一に長方形に掘り下げることになります。
地盤に合わせて基礎を決め、予算に合わせて建物が決まったといえます。
鉄筋コンクリートのときは、建物内部に柱はありませんでしたが、木造にしたので、内部に柱が必要になりました。これは独立柱として目立つところもありますので、15センチ角の杉材を用いることにしました。一般の住宅は10.5センチ角が多いので、かなり太い柱です。
15センチ角の柱は、外壁を支える部分に6本、内部に11本の計17本が使われます。内部の11本が、この木造建築を象徴するものになります。
窓は、アルミサッシに障子を組み合わせます。
屋根も壁も、アルミと亜鉛の合金を鉄板にメッキしたガルバリウム鋼板を用います。外観は無機的な事務所建築ですが、中に入ると、太い木の柱がならんでいて障子もある木造の雰囲気の感じられる作りになります。

山賀康弘(一級建築士)
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2006年12月1日発行 No.212より

基礎工事開始(215号)>>

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