トップへ 他のレポ−ト 調査報告 浜岡原発設計者の告発

浜岡原発の事故に備えよう

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浜岡原発を設計した技術者が、東海地震で浜岡2号機が崩壊すると告発しました。
浜岡には原発が5機あって、少なくとも原爆数百発分の放射能が入っています。もし崩壊して爆発すると、原爆よりはるかにひどい被害が出ることは確実です。
原発で重大事故が発生するたびに本誌は、被害を避ける方法を提案してきました。ただ、相手は特定の原発ではなく、読者の方の近くにある原発の事故を想定して、提案していました。
今回の告発により、東海地震によって浜岡原発で重大事故が起こる確率が、飛びぬけて高いことが確実になりました。
ですから、浜岡という具体的な場所から大量の放射能が放出されたときに、どうするかを考える必要がでてきたのです。
風はおおむね西から東に流れているので、九州や四国の人は放射能が降ってくることはおそらくないでしょう。それでも、チェルノブイリ原発事故から推定すると、高気圧が太平洋にあるときは、関西ぐらいまでは放射能を含む風が吹くことはあるかもしれません。
放射能が飛んできた地域では逃げるのが最高の対策なので、東海地震で浜岡原発が崩壊すると、関東地方から1千万人を超える難民が出ることは避けられないでしょう。そうなると、全国のどこでもその影響を受けることになります。
ともかく、「東海地震発生」と聞いたら、神戸から仙台までの間に住む人は、放射能が飛んできて影響を受ける可能性があるので、すぐ逃げ出す準備にかかりましょう。
東京の場合は、ちょっと逃げ遅れたら、身動きが取れなくなるのは確実です。気象条件を確かめながら、家族をそろえて、まとまったお金を下ろし、「原発防災グッズ」(127号に記事)を持って、放射能が飛んで来ない方向にまっ先に逃げ出しましょう。
なお、東海地震が発生したら、その時点から安全基金事務局はとりあえず1日、臨時休業になりますので悪しからず。
(小若 順一)

●データ改ざんが常態化

「30年間子どもを育てている間は余裕がなかった」が、浜岡原発2号機の相次ぐ故障に、証言を決意したのは、33年前、設計にかかわった元技術者の谷口雅春さん(63歳、東京都足立区)。
そして4月15日、静岡県庁で衝撃の記者会見が行われ、「耐震計算の数値ごまかしが検討されていた」と告発したのです。

東芝の子会社の日本原子力事業(株)にいた谷口さんが、浜岡原発2号機の耐震設計に携わっていたときのことです。
耐震設計の計算担当者が「耐震計算の結果では、浜岡2号機は地震に耐えられない。建屋と圧力容器について、いろいろ耐震補強の工夫をしてみたが、空間が狭すぎてうまく行かないのであきらめた」「振動解析の結果、核燃料集合体の固有振動数が想定した地震の周波数に近くて、共振しやすい」と、会議で話したのです。
そこで、耐震強度については「岩盤の強度を測定し直したら強かったことにする」ことにし、共振しやすい点については、実験計測値ではなく米国GE社の推奨値を使い、建屋の鉄骨の粘度を実際より高くして地震の動きを吸収することにして、ごまかしの再計算をし、設計変更も耐震補強もせず、当初計画のまま押し通す相談がされたというのです。

【1号機から5号機まで危ない】

悩んだ谷口さんは、これでは責任を持って仕事ができないと、警告の意味も込めて退社を上司に伝え、自分の席に戻ると、耐震計算結果のファイル3冊の中身がすべて抜き取られていたといいます。
「悪いことという意識もなくデータの改ざんが常態化していたのかもしれない」と谷口さんは言い、「浜岡原発は止めるべきだ。第3者による地盤調査をやってもらいたい」と主張しています。
実は、浜岡2号機については、1980年に地盤データのばらつきが不自然で、データ改ざんの疑いが強いと地質学者の生越忠氏(和光大学教授・当時)が指摘していました。そして「2号機を支える地盤の強度は、法令を満たしていないおそれすらある」と警告していたのです。
2号機の建設前に相談されていたとおり、中電が地盤データを改ざんしたとすれば、それを生越氏が発見していたことになり、谷口さんの告発と、生越氏の説は符合します。
その同じ地盤の上に、3号機、4号機、5号機と次々に増設が許可されたので、疑いは、すべての浜岡原発の地盤データに及ぶことになります。
大地震は起こっていないのに、浜岡原発の1号機・2号機にはシュラウド(炉心隔壁)にひびが入っていることが見つかりました。そのことを知って谷口さんは、地盤の強度が不足している上に、地震がなくてもひびが入るような材料が使われていることに驚き、証言を決意したと言います。この証言を無駄にはできません。

●東海地震で浜岡原発が危ない

1976年3月に中部電力浜岡原発1号機(静岡県御前崎市)は営業運転を開始。その5ヵ月後の8月に東海地震説が発表されました。その後、地震の専門家が次々と東海地震への危惧を表明しています。
政府の地震予知連絡会は、東海地震はM8.0以上と予測。これはM7.2だった阪神大震災の10倍以上、M6.8の新潟県中越地震の60倍以上のエネルギーを持つ大地震です。
阪神大震災では、ビルが倒れ、高速道路のような巨大構造物も壊れました。
その10倍以上の地震が予測されている地域の、ほぼ真ん中に浜岡原発があります。
予測通りに大地震が起きれば、5機の原発がどうなるかが危惧されます。

【不正の多い浜岡原発】 図2チェルノブイリ原発事故による放射能汚染地図
そんな状況の中で咋年8月、4号機でコンクリートに弱い骨材が使われ、それを不正検査で見逃していたことが、内部告発によって明らかになりました。
さらに、この4月には、浜岡2号機を設計した技術者の「耐震数値をごまかした」という証言が地元のテレビで流れたのです。
岩盤の強度が弱いことと、核燃料集合体の固有振動数が想定地震の周波数に近くて共振しやすいことがごまかされ、東海地震が起これば、・浜岡2号機は破壊される、・核燃料がぶつかり合って炉心崩壊が起こる、という2つの重大な可能性が隠されていたのです。
しかも、当時の想定は横揺れだけで、直下型の縦揺れは考慮されていませんでした。
浜岡原発が破壊されると、放出された放射能がどの地域まで汚染するのでしょうか。
チェルノブイリ原発事故の汚染を日本に当てはめると、関東から新潟に至る広い地域で1年間以上、人が住めなくなるほどの放射能汚染が生じることになります(図2参照)。
浜岡2号機では、大事故のときに放射能汚染がどう広まるかと、それでガンにかかって死亡する人の数が試算されていました。
ある日の風に、浜岡原発2号炉の事故で出た放射能を乗せると、地元の静岡県は当然として、神奈川・東京・埼玉・千葉・茨城でも1年間は住めない汚染が生じ(図3)、放射能汚染によってガンで亡くなる人は176万人と推定されています(図4)。

図3浜岡原発震災が起こった場合の放射能汚染シュミレーション図4ガンによる死亡予測

写真・資料提供:原発震災を防ぐ全国署名連絡会

ただし、これは2号機に限った予測で、1号機から5号機までのすべてで震災事故が起こったら、この程度ではすみません。
人間の力で地震の発生を止めることはできませんが、原発を止めることはできます。この現実を周りの人に伝えていただき、一刻も早く、浜岡原発を止めたいと考えています。

古長谷 稔(原発震災を防ぐ全国署名連絡会事務局長)

詳細情報は 『ストップ浜岡原発』
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2005年6月1日発行 No.194より


関連ページ

・「フクシマ」の映像作品『いのち-from FUKUSHIMA to our future』

・書籍『放射能を防ぐ知恵』

・冊子『放射能から子孫を守りたい』(全文無料公開)

・レポート「地震への備えは大丈夫?」2007年4月1日発行 No.216より

・レポート「耐震には地盤も重要」月刊誌『食品と暮らしの安全』2006年6月1日発行 No.206より

・レポート「地震で壊れた福島原発」月刊誌『食品と暮らしの安全』2011年6月1日発行 No.266より

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