代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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歳をとるほど大きくなる放射能の影響 安全基金の活動と考え方(98)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 「微量の放射性物質“健康にまったく影響なし”」とNHKが伝えたのは、 1・2・3・4号機が爆発した後の2011年3月15日夜7時のニュースです。
 これを信じた人はいないと思いますが、汚染された食品をどうするかに困りました。 「放射線に対して鈍感になっている大人や高齢者は、汚染された食品を食べよう」と、 原発反対派の専門家が言い、農林水産省は「食べて応援しよう」とキャンペーン。
「60歳を過ぎれば、放射能汚染食品を食べても、悪影響はほとんど受けない」というのが、今や一般常識になっています。

 しかし、この常識は間違っていました。

 わかりやすい例を挙げましょう。
 やっと歩いている人が、放射能で筋肉細胞を少しでも失うと、どうなるでしょうか。
まったく歩けなくなります。
 だから、筋肉への放射能の悪影響は、歳をとるほど大きくなるのが基礎原理なのです。

 放射線を浴びると、筋肉細胞の遺伝子が傷つきます。その細胞は分裂するときに多くが死ぬので、 筋肉量が少なくなります。時間がたつと、筋肉量は元に戻りますが、歳をとると、 戻るのに時間がかかる上に、元には戻りにくくなります。
 筋肉量が減ることによる悪影響はこうです。
 筋肉が少なくなると筋肉は短くなります。 骨の長さは一定なので、骨と骨をつなぐ筋肉が短くなると、つっぱったり、こわばった状態になります。 それで、関節を大きく広げられなくなり、小さくしか動けなくなるのです。
 若い人は筋肉量にゆとりがある上に、細胞が死んでも、隣の細胞がすぐ分裂して元に戻るので、放射能の影響は少なくなります。
 放射線の悪影響は、歳をとった状態と似ているので、本人は「歳をとったな」と思い、周りからもそう言われるので、誰も気付かなかったのです。 60歳を過ぎれば本来の寿命を迎えるケースが増えるので、放射線による発ガンリスクは少なくなります。
 しかし、食品汚染による健康影響は大きくなるのです。
 放射線の影響を分類してみましょう。生殖細胞が攻撃されると、子孫に影響が出ます。 これは生殖可能年齢までです。
 ガンは、放射線を浴びてもすぐには発生しません。何年もかかってガンになるので、 その間に別の病気で死ねば、ガン死と放射能の関係はないとされます。
したがって、高齢者は発ガンリスクが少なくなりますが、筋肉、神経系、脳、皮膚などへの影響は違います。
 悪影響がわからなかったのは、細胞の遺伝子が放射能によって傷つけられても、すぐに影響が出ないからです。 細胞の寿命は、臓器や部位、細胞の状態によって異なります。 胃の粘膜細胞は1日で交替し、筋肉細胞は数ヵ月で交代するといわれますが、これは平均での話。 細胞がどんな状態にあるかで、放射線を受けたときにどうなるかは大きく異なります。 死亡とガン以外は放射線の影響がほとんど無視され、被害者は切り捨てられてきました。

 この状況を変えていこうではありませんか。


2014年2月1日発行 No.298より

安全基金の活動と考え方(99)「嫌われてもする、好かれることをする」

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