代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「25周年記念講演C極微量で女性ホルモン作用」
安全基金の活動と考え方(43)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 1997 年9月、「ほ乳ビンからビスフェノールAが溶出」と本誌で報告しました。 すると、ほ乳ビンから出ている微量の環境ホルモンが、赤ちゃんにとって危険ではないか、とテレビが何度も取り上げて、大きな問題になりました。
 私としては水道管の内面に使われているエポキシ樹脂はビスフェノールAが原料なので、こちらも気になりました。しかし、 水道管の内面塗料は、まったく社会問題になりませんでした。
 スタッフが、ほ乳びんのデータを海外に発信しておいたところ、 私たちが知らないところで環境ホルモンの研究者たちが関心を持ち、極微量分野での研究が始まり、世界の環境ホルモン研究を左右する大問題になっていきました。 でも、そんなきっかけをつくっていたことを私たちが知ったのは、数年たってからです。
 ビスフェノールAは「極微量」でも女性ホルモン作用があるとする研究結果を、年末にミズーリ大学のボンサール教授が発表。 化学工業会は、それに対抗して、ビスフェノールAは極微量では影響がないことを証明しようと研究を始め、研究結果を続々と出して大反論をしていきます。 ただし、反論者は、水道管から溶け出るビスフェノールAを排除しないずさんな研究を行っていたので、2000 年にボンサール教授の勝利が確定しました。

コーデックスでの国際活動
 1999 年からは、FAO/WHO のコーデックス委員会に出て、有機食品や遺伝子操作食品の国際食品規格作りに貢献しました。
 当時スタッフの熊澤夏子が代表として出席し、日本の市民運動史に残る画期的な国際活動を行ったのですが、これは会員の皆さまのカンパのお陰でできた活動です。
 それは、1998 年のクリスマスイブにアメリカの CSPI(公益科学センター)法律部長ブルース・シルバーグレイド氏から、 国際団体を作ってコーデックスで活動しようと呼びかけがあったことから始まります。 毎年、訪ねて来て日本酒を酌み交わしていた彼から、「すごい!」と思う提案があったのです。 でも、次の瞬間、「お金をどうしよう」と、頭をかかえました。 それで、カンパに頼ることにしましたが、何と 300 万円を越える資金が寄せられ、しかも翌年からもカンパが集まり続けたので、これが、すごい活動の源泉になりました。
 私も、熊澤たちが出席しているオタワの表示部会に少しだけ参加して、驚きました。 日本代表団は「国益」や「省益」どころか、「課益」に終始し、パーティでも外国の代表団とはまったく交わらず、 日本から参加した企業の人たちに囲まれて歓談し、そのまま消えて行ったのです。
 NPOに提案権はありませんが、翌年から日本の「顔」は熊澤になり、大差をつけられた日本政府は、英語と仕事のできる人を送り込むようになっていきました。 これが、日本への最大の貢献だと思います。


2009年7月1日発行 No.243より

安全基金の活動と考え方(44)「25周年記念講演D抗生物質の分野別使用量を入手」

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