食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
フランスが、地球温暖化対策の一環として2040年までに国内でガソリン車、ディーゼル車を販売禁止にする方針を発表。
イギリスは、大気汚染対策として、やはり2040年までに同様の措置を取ると発表。
ドイツのメルケル首相も「方法は正しい」。
電気自動車への流れが加速したので自動車会社は対応を始め、マツダとトヨタが提携し、ドイツの自動車会社も大慌てしています。
しかし、電気自動車への大転換は、大失敗します。
第1の理由は、電気自動車が高いこと。
日産リーフは280万円からで、同クラスのガソリン車より100万円ほど高くなります。
企業努力で解消できる価格差ではないので、補助金などの優遇措置で電気自動車を増やしていくでしょうが、
国の財政にゆとりがなくなった時点で、推進政策は早晩破綻します。
第2は、充電に時間がかかって不便なこと。
第3は、バッテリーの寿命が短いこと。
これまでには3万kmの走行でバッテリー性能が下がったケースがありますが、性能が上がっているので、今は5万kmほどの走行で、バッテリー性能が下がり始めます。
バッテリー交換に費用がかかることが、消費者に知れ渡った時点で、電気自動車の推進政策は後退します。
第4の理由は、バッテリーに用いるリチウムとニッケルの価格が高騰すること。
リチウムもニッケルも、先進国のすべての自動車に積めるほど生産量がありません。
これまでとは桁違いに需要が増えるので、価格が上がります。
リチウムの価格が上がると、高い電気自動車がさらに高くなります。
第5の理由は、バッテリーの製造、再生にエネルギーが必要で、二酸化炭素が出ること。
見えにくい部分ですが、バッテリーの製造、能力が下がったバッテリーの再生にも、資源とエネルギーが使われ、大量の二酸化炭素が出るのに、それが無視されています。
第6の理由は、燃費の優位性がないこと。
今は狭い範囲を走るだけですが、電気自動車がメインの車になると、遠くまで走れ、その間中、エアコンが効かせられるように、大きなバッテリーを積むことになります。
そうなると、価格が高くなるだけでなく、重くなるので、燃費の優位性がなくなります。
第7の理由は、充電用に発電所の発電量が増加すること。
発電所で熱と二酸化炭素を多く出すので、今とは違う場所で異常気象が起きます。
第8の理由は、電気が半分ロスしたエネルギー源だから。
電気モーターのエネルギー効率はいいのですが、電気は充電スタンドに送られてくるまでに、
エネルギーを半分ロスしています。だからガソリンや軽油を燃やして走る車より、電気自動車はエネルギー効率が悪くなるのです。
排ガスを出さない電気自動車は、限定した範囲では、大気汚染を起こしません。
しかし、バッテリー工場でも環境汚染物質を出し、二酸化炭素も出しています。
こうしたマイナス面を理解して対策を取り、地域を限定して、大気汚染を出さない電気自動車を使うのが、いい使い方です。
2017年9月1日発行 No.341より