食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
クーデター未遂が起きたトルコの黒海沿岸に、日本とフランスの企業連合が110万kW級の原発4基を建設することにしています。
これを強く後押ししたのが安倍首相で、2013年に2度トルコを訪問して、ノシップ原発の契約にこぎ付けました。
しかし、トルコの地震専門家たちは、大地震がよく起きるトルコに原発を造るのは危険過ぎると反対しています。
1000人以上の死者が出た大地震が、この半世紀に7回も発生。
1999年8月にイスタンブールに近い北西部で発生したマグニチュード7.6の地震では1万7000人が死亡しています。
当時のエジェビット首相は、この1年後に、1997年から進めていたアックユ原発の計画を白紙撤回しました。
フクシマで4基も原発を爆発させた日本が、この事故に地震が関与していたかどうかを検証しないまま、2年後に、トルコへ原発を売り込むとは狂気の沙汰です。
「世界で最も厳しい安全基準にのっとって」
と、安倍首相は言います。欠陥だらけの原発を審査でパスさせている基準が厳しいとは考えられませんが、
それはさておき、クーデターが起きると、基準はまったく役に立たなくなります。
原発を警備していた軍が、原発を盾に取って政府を攻撃するような構図になったりするからです。
クーデターが原因で原発事故が起きたとき、専門家を原発に救援に送ることも困難です。今回は、イスタンブールの国際空港が一時閉鎖されました。
トルコは今、混乱が拡大する要因をたくさん抱えています。
エルドアン大統領は、クーデター計画の背後に、アメリカへ亡命中のイスラム教指導者ギュレン師がいると決めつけ、ギュレン師のイスラム団体をテロ組織に指名しました。
これは、「ギュレン運動」の支持者をテロに走らせる政策で、こんなときに原発をつくると真っ先に狙われます。
トルコは、人口の5分の1ほどを占めるクルド人を抑圧してきました。政府と敵対する非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)によるテロが、各地で相次いでいたのですが、
2013年、PKKが停戦合意を表明した直後に、IS(イスラム国)の設立が宣言されました。
P K K が戦闘員を徐々にイラク北部に撤退させ始めると、ISとの直接対立を避けてきたトルコ政府は2015年にISとの全面対決に踏み切り、
それからトルコでもIS系によるテロが頻発するようになりました。
6月下旬にはイスタンブールの国際空港で、IS系とみられる男3人による自爆テロで40人以上が死亡しています。
これらに加えて、トルコはシリア内戦にも関与し、シリア難民の主要受け入れ国ともなっていて、国内の不満を高めています。
こんな混乱要因を抱えている国に、安倍首相は「原発を輸出して外貨獲得」と言っています。
しかし、テロやクーデターで原発事故が起きたら、莫大な支払いで企業は倒産し、その補償を国がすることになっているので、日本国民は大損するのです。
2016年8月1日発行 No.328より