食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
放射線の危険常識は間違っていることがあると、ウクライナ調査で、わかってきました。
原子力ムラだけでなく、反原発の学者も間違っていたのです。
「50歳以上の人が責任をとって食べよう」と、
基準以下の汚染食品を食べることを小出裕章京都大学助教は推進しましたが、
それで被害にあった人は大勢いそうです。
やっと歩けている老人が、放射線で筋肉を傷けられると、歩けなくなります。
脳も同様で、記憶力が悪くなっているのに、脳細胞が多く傷つくと、認知症のような症状が出ます。
「ぼけているから」と家族から言われていたウクライナの86歳女性は、放射能の少ない食事にしていたら、
1年半後には、きちんと話せるようになり、家族は誰も「ぼけている」とは言わなくなっていました。
記憶力が急激に落ちたのに、気分だけ晴れ晴れとすることはありません。
気分が落ち込んで、鬱状態から鬱病にもなります。
歳をとればとるほど、筋肉や脳の細胞は余裕がなくなるので、汚染食品を摂ってはいけないのです。
「チェルノブイリ事故から25年」というウクライナ政府報告書では、
汚染地の子どもの78%に慢性疾患があります。
これは、医師が把握した病気の割合なのに、日本政府は完全に無視し、マスコミもほぼ無視しています。
私は「非汚染地域」と呼ばれる汚染地域で、頭痛、足痛、目まいが多数の人に出ていることを発見しましたが、
これも無視されたまま。本来は、化学物質のように、これらの症状で放射線の「無作用量」を探し、
それを基に規制すべきなのです。
化学物質のリスク論を研究していた中西準子さんが出版した『原発事故と放射線のリスク学』は、
放射線によるガンのリスクを考えているだけで、化学物質のようにさまざまな症状や病気を考慮していませんでした。
放射能による食品汚染で、初の大被害が出ているチェルノブイリの現地情報を知らなければ、リスク論も有害無益です。
放射線の科学は、3点が間違っていました。
第1は、放射線で出る人体被害は、ほとんどガンだけと限定したこと。
第2は、臓器と細胞を「均一」として、内部被曝の影響を計算すること。
第3は、細胞に入った放射能の元素が、遺伝子からどの距離にあるかを無視したこと。
放射線(ガンマ線)が当たる確率は、遺伝子からの距離の2乗に反比例して小さくなります。
遺伝子の「糸」は直径2nm(10億分の2m)で、細胞の大きさは、その1万倍ぐらいです。
隣の細胞から出た放射線が、「糸」に当たる確率は1万×1万=1億分の1になり、外部被曝と大差なくなります。
内部被曝は、細胞のどこに放射能があるかを調べないと、遺伝子への影響を計算できません。
それを調べずに間違った計算をして、被害は出ないと強弁しているのです。
放射能の内部被曝による健康影響の科学は根本的に間違っていました。
今のままでは、食品汚染による内部被曝で福島を中心にさまざまな被害が出ます。
2014年7月1日発行 No.303より