福島第一原発 膨らみ続ける損失と汚染
トリチウムを海に放出すると危険!
今のところ、漁協や市民の反対で海洋放出はされていませんが、
「基準を満たせば、環境への影響や、健康への影響等は考えられない」と国は言います。
北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は顧問をしている「市民のためのがん治療の会」の
講演会「トリチウムの健康被害について」で、以下のように話しています。
ガンと白血病が増加
国は「トリチウムは自然界にも存在し、全国の原発で40年以上排出されているが健康への影響は確認されていない」
「トリチウムはエネルギーが低く人体影響はない」と安全性を強調していますが、
世界各地の原発の周辺地域では、事故が起きていないのに、周辺住民に健康被害が報告されています。
ドイツでは1992年と1998年に行われた原子力発電所周辺のガンと白血病の増加に関するK iK K 調査が有名です。
原子力施設周辺5km以内の5歳以下の子どもは、白血病の危険度が5km以遠に比べて2.19倍、
固形ガンの危険度は1.61倍で、原発からの距離が遠くなると発病率は下がったという結果が出ています。
カナダではダウン症も増加
カナダでは、トリチウムを多く出すタイプのCANDU原子炉が稼働後、
しばらくして住民が実感として健康被害が随分増えていると騒ぎ出しました。
調査した結果、やはり周辺都市では小児白血病や新生児死亡率が増加し、またダウン症候群が80%も増加しました。
泊原発―ガン死亡率が22位から1位に
日本国内でも同様の報告があります。
日本の原発では、加圧水型は沸騰水型より10倍ほど多くトリチウムを放出しています。
それで、全国一トリチウムの放出量が多い玄海原発では、
稼働後に玄海町と唐津市での白血病が増えたという報告があります。
北海道の泊原発でも稼働後に周辺でガン死亡率が上昇しました。
泊村と隣町の岩内町のガン死亡率は、泊原発が稼働する前は道内180市町村の中で22番目と72番目でしたが、
原発稼働後は道内で1位が泊村、2位が岩内町になったのです。
垂れ流しされているトリチウムによって、このようなことが起きたと考えられます。
動物実験では、トリチウムで被ばくした動物の子孫の卵巣に腫瘍が発生する確率が5倍増加し、
精巣萎縮や卵巣の縮みなど、生殖器の異常が観察されています。
トリチウムを海に出してはいけない
トリチウムは、化学的性質は普通の水素と同じですが、β線を出す放射性物質です。
このβ線は、体内で飛ぶ距離は0.01mmほどで、エネルギーが弱いのです。
それでも、水の水素と酸素の結合エネルギーの1000倍以上なので、飛ぶ箇所は大きな影響を受けます。
原発は、事故を起こさなくてもトリチウムのような放射性物質を環境中に放出するので、
健康問題の視点からも稼働すべきではないのです。
月刊『食品と暮らしの安全』2019年5月号No361 掲載記事(全文)