独自調査
月刊誌記事から>日本でも早急に規制を(2005年7月 No.195)
●日本でも早急に規制を〜トランス脂肪酸を減らそう〜
「健康にいい油脂を選んでいるはずなのに、身近な食品に有害なトランス脂肪酸が含まれているかもしれない」と、193号で取り上げたところ、大きな反響がありました。アメリカでは2006年から食品中のトランス脂肪酸の含有量が義務付けられるのに、日本では、トランス脂肪酸についての情報が知られていません。マーガリンがバターに比べて健康に良いと思っている人は少なくないのです。
そこで、日本のマーガリン類とバター、加工食品がどのくらいの量を含んでいるのか検査しました。検査結果は表1です。
デンマークの基準は脂肪や加工食品に含まれる脂質、トランス脂肪酸2%以下。
合格、不合格の基準は、トランス脂肪酸の規制先進国であるデンマークの基準に従いました。(表2参照) 明治コーンソフトの場合は脂質中にトランス脂肪酸は12.7%で不合格。
小岩井マーガリンは脂質中1.8%で合格となります。 バターのトランス脂肪酸は2%を超えますが、天然物なので、規制外です。 マーガリン類はすべて不合格ではないかと考えていたので、小岩井のマーガリンの結果は、消費者にとって朗報といえるでしょう。選ぶことができるからです。
健康を考え、味を我慢してマーガリンを使っていた人は、バターを少し使えばいいのです。バターを避けたい人は、小岩井のマーガリンを選ぶことができます。
マーガリンは低減進む
●企業は「対応できない」
トランス脂肪酸が多かったマーガリン類の3社に、調査結果を添えて、改善の意向について質問状を出しました。回答は次の通りです。
雪印乳業(株)は、「通常の食生活において、トランス酸の過剰摂取によるリスクを心配する必要は全くないものと考えている」
ユニリーバ・ジャパン(株)(旧:日本リーバ)は、「現在の日本人の食生活においてはなんら問題がないと思われる。日本人の摂取エネルギーの変化や、脂質栄養の研究、さらに国際的な規制等の動向について引き続き注視し対応していく」
明治乳業(株)は、「重要なこととして認識しているが、今はまだ対応できない。食品安全委員会の動向には注目している」。
対応しにくい理由は、明治乳業の商品は、コーンソフト、べに花ハーフと使用油脂名が商品名になっているから。不当表示にならないようにこれらの油脂を使うと、水素添加する製造法しかない、ということです。
●平均で「影響小さい」は困る
表1にある加工食品の検査結果は、製品中にどれだけトランス脂肪酸が含まれているかを示す値です。「マックフライポテト」なら、ジャガイモも含んだ100g中のトランス脂肪酸の量(g)です。
マーガリン類のように何回にも分けて食べる食品と一緒ではわかりにくいので、食べる量1回分に置き換えて表2に表わしました。
マックフライポテトの場合、500円のセットを頼むと付いているポテトはMサイズ。すると、フライポテトだけで4.55gを摂ってしまうことになります。
コーヒー用のフレッシュクリームを使うとき、植物性油を使用している「スジャータP 褐色の恋人」の1回分は0.36g。乳製品の「森永 クリープ
ポーション」より18倍も多くなります。
マックのフライポテト(Mサイズ)を食べながら、コーヒーにスジャータを使ったら、4.91g。
クロワッサン風菓子パンのヤマザキ「シュガーロール」とアンデルセン「クロワッサン」とでは、シュガーロールの方が5倍多く、1個当たり0.95g。シュガーロールは1袋5個入りです。食べ盛りの子どもなら5個をペロリと平らげてしまうでしょう。するとトランス脂肪酸の摂取量は4.75gとなってしまいます。
食品安全委員会は「諸外国と比較して日本人のトランス脂肪酸の摂取量が少ない食生活から見て、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さい」としています。※
その根拠として、1日あたりの摂取量が日本では平均1.56gと、数字を挙げていますが、人気のマックやヤマザキのクロワッサン風菓子パンを食べている人は平均の3倍を超えてしまうのです。
ですから、規制が必要で、規制には基準以下にするデンマーク方式と、表示させるアメリカ方式の2通りあります。
アメリカで表示が義務化されるのは最近の研究で、トランス脂肪酸が悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させる働きがあることが明らかになっていて、心臓病の大きな原因の一つとなり得ることが指摘されているからです。
また、WHO(世界保健機関)でも2004年5月に開催された総会の中で、トランス脂肪酸の摂取に関して制限をかける必要性があるとの見方をしています。
外食が多い人や、子どもたちの食生活も心配ですが、健康を考え選んだつもりで、逆にトランス脂肪酸のリスクを高めている人も少なくないでしょう。
規制が早く行われるよう、消費者の声を高めていきましょう。
※安全委員会ホームページ http://www.fsc.go.jp/sonota/54kai-factsheets-trans.pdf
●トランス脂肪酸を避け、安全な油を
表示がないトランス脂肪酸を避けるためには、次のことに気をつけましょう。
☆マーガリン類、ショートニング、植物性生クリームを大量に使わない、また、大量に使っているものを食べないことです。
☆とろみのある生クリーム、ホイップクリーム、ラクトアイス、カスタードクリーム、チョコレート類で「植物油」表記のあるものは避けます。
☆油を高温で加熱しても、トランス脂肪酸が生成されます。
デバートやスーパーなどの揚げ物は避けたほうが無難です。お店によっては使いやすい水素添加した油を使っています。
[ 酸化した油に注意 ]
油の安全性を全体的に考えると、酸化した油に最も強い危険性がひそんでいます。何度も加熱した油や日光にあたった油、古い油を避けることを、トランス脂肪酸を避けることより優先して考えましょう。
2005年7月1日発行 No.195
・「食事から放射能を抜いたら、「奇跡」が次々と起きた」(ウクライナ調査報告)
・「食事の改善で「発達障害」「うつ病」「総合失調症」が・・・」 ミネラル不足食品ばかりでは病気に罹る
・出版物一覧