代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「3000分の1」の線量で症状が 安全基金の活動と考え方(86)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


 放射線を浴びせて、生殖細胞の遺伝子の分子がたった1つ変化するだけで、遺伝には大きな影響が出ます。 だから、どんなに低い線量でも、遺伝への影響はあります。
 発ガン実験でも、当たった線量に応じてガンが発生するので、余分な放射能はゼロがいいという国際的な合意があります。
 しかし、これを徹底すると原子力を推進できないので、地球には放射能値が高い地域と低い地域があり、 その範囲内の、年間1ミリシーベルト(mSv)なら余分に浴びることを「受容する」という国際基準ができています。
 福島は、受容できる線量を超えているので、原子力ムラと政府は、事故後に「生涯に100mSvまで」とか「年間20mSvまで」は「影響がない」と言うようになりました。
 「影響がない」は、完全なウソです。
 私は、ウクライナで「痛み」を調べ、毎日10ベクレル食で、子どもに痛みが生じることを見つけました。
これは、年間0.05mSvに相当するので、国際基準である年間1mSvの「20分の1」で被害が出ると書いたのが、月刊誌『食品と暮らしの安全』2012年12月号です。
 ところが、症状が出ることが確認されている線量と比較すると、もっとすさまじい差があることがわかりました。 放射線は、脱毛、悪心、嘔吐、不妊などの被害を出しますが、これらの症状は150mSv以上でしか確認されていません。
 つまり、症状が出ると確認されていた線量の「3000分の1」で「痛み」が出ていたわけです。

 痛みが0.05mSvで出始めたのは、少人数の調査なので、それに「安全率」を掛けて、より厳しい水準で規制しないと、国民全体の安全は守れません。
安全率を考えるときに参考になるのが、化学物質の規制方法です。
まず、ネズミの急性毒性や突然変異性を調べ、安全に使用できそうな範囲を推定します。
そこで有用な使い方ができそうなら、催奇形性、アレルギー性などの実験を積み重ね、実用化したときに問題が生じそうかどうかを確かめます。 最後に、お金がかかる長期飼育実験をして、ガンや、その他の症状が出ない「最大無作用量」を突き止めます。
 実用化と規制がスタートするとき、ネズミと人間は違うので10分の1、子どもや老人や妊婦などを守るために10分の1、計100分の1の安全率が、 ネズミの最大無作用量に掛けられて、許容値とされるのが原則です。
 放射線による痛みは、子どもでしか調べることができません。大人になると自然に体のあちこちが痛むようになるからです。
痛みが出る理由は、細胞分裂を少ししかしない神経や筋肉に、放射線によるダメージが蓄積した、というのが私の説で、これが最も妥当な説だと思います。
 子どもの神経や筋肉は、大人と比べればよく細胞分裂します。歳をとるほど傷を修復できなくなるので、 原理上、痛みが出やすくなります。事実、ウクライナの田舎では、ほとんどの大人にひどい痛みが出ていました。
 痛みは、子どもで見つけた最大無作用量に、安全率の10分の1を掛けて基準を作り、大人を守ることが必要になります。


2013年2月1日発行 No.286より

安全基金の活動と考え方(87)「「ないことにする」のはやめよう」

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