食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
「満腹感」が起きる原理が、より深くわかるようになったと報道されました。
脳の食欲中枢で「ネスファチン」と呼ばれるたんぱく質が増えて「満腹感」が生じます。 このネスファチンを持つ脳神経細胞が、高濃度のブドウ糖とインスリンに反応して活性化することが発見されたというのです。
現代は、満腹感を感じないで際限なく食べ、肥満になる人が増えています。 ここにミネラル不足の原理が隠れているというのが、私の説です。
実験は、ミネラルが足りた条件のもとで行われています。 ミネラル不足だと、ネスファチンをもつ細胞の活性化が不十分になりますし、神経伝達物質が不足して神経伝達も不十分になるので、満腹感を感じるのが遅くなります。
人間は、それで食べ過ぎているのです。
このことに気づいたのは、私のダシ体験から。東京・麹町にいたころ、昼と夜は外食で、朝はパン食。家庭料理を食べるのは週に2度ほどでした。 当時は、トンカツを食べて満腹になって店を出たとき、前に寿司屋があると「食べたい!」と思ったほど、常に食欲がありました。
ところが、天然ダシを販売しようと、数十種類のだしを集めて、ポケットに入れて持ち歩き、外食のときにかけては味見していたところ、 気がつくと、満腹のときのヘンな食欲が消えていました。
ほぼ同時に、寝る前に足がつりそうになる感覚もなくなったので、ほんの少しミネラルを補給するだけで、体が正常になることを実感したのです。
では、現代の食品はどうしてミネラル不足になったのでしょうか。
これから暑くなるにしたがって、350ミリリットルの缶飲料がよく売れるようになりますが、ここにも、現代食品の秘密が隠れています。 喉が渇いているとき、無果汁の甘い飲料なら350ミリリットルを簡単に飲み干すことができます。
ところが、果汁100%のジュースを350ミリリットル飲もうとすると大変です。 ミネラルやビタミンなどの栄養成分が十分に入っていたら、程よいところで「満腹感」が出て、
それ以上食べたいとか飲みたいとは思わなくなるので、意識して無理しないと飲めません。 チョコレートも、ミネラルが豊富なので、少量しか食べられません。
いつまでもおいしく食べ続けられる代表的な食品はスナック菓子で、これは典型的なミネラル不足食品です。 現代の食品は、ほぼすべて化学調味料で味付けされているので、美味しく感じます。
その美味しさが、ミネラル不足食品は最後まで続くので、食べ終えたときに好印象が残るのです。
一方、ミネラルの豊富な食品は、食べ終えたときの印象は、「満腹感」になります。 したがって、2度目に買われるのはミネラル不足食品になり、精製度の高い食品だけが市場で生き残って、加工食品や外食はミネラル不足食品ばかりになっているのです。
このことを自覚して、化学調味料無添加にこだわり、ミネラルが足りる食事にすれば、ムダに太らず、今より健康でいられます。
2012年5月1日発行 No.277より