1998年に出版された『その食事ではキレる子になる』(鈴木雅子著、河出書房新社)がベストセラーになっていれば、 食事による被害が、ここまで拡大することはなかったでしょう。
子どもたちの食生活と、問題行動の関係を調べた著者は、その関連性の強さを発見し、著書で公表していたからです。
「15年の調査を続けている間に、食生活の内容はますます悪くなり、もう子どもの9割あまりが問題のある食生活となっています」と書かれ、 子どもが問題行動を起こすような食生活を12年前に「現代型栄養失調」と名づけています。
その後、食事の中身はさらに悪くなって、大人までキレやすくなり、日本人全体がイライラしているように、私は思います。 栄養専門家は食事からミネラルが抜けていることに気づかなかったので、本誌が次々とスクープしているわけです。
さて、90年代と現代の食事を比べると、どう違っているのでしょうか。 清涼飲料水を飲み過ぎる人はいるにしても、現在はお茶がよく飲まれるようになって、砂糖の摂り過ぎは改善しています。
ところが、このお茶が純水で製造されるようになっていて、水に含まれていた極微量ミネラルを摂れなくなっています。
食品の精製度が高まったので、ミネラルやビタミンはもちろん、それ以外の微量成分も減っていますが、何がなくなっているのかは、誰も調べていません。
ミネラルについては、ここ数年の調査で実情がかなりわかってきました。体の構成要素となっているカルシウムやマグネシウムなどの主要ミネラル不足は、
補充を始めて効果が見え始めるまでに2週間から1ヵ月かかります。 心身の調整に使われている微量ミネラル不足の場合は、3〜4日で効果が見え始めます。
冷え性は、5分もすれば効果が現れる人が多いので、本当はすぐに効果が現れている可能性もありますが、他の病気で効果を調べるノウハウはまだ得られていません。
ミネラル不足による症状が良くなる様子を、自転車に例えてみましょう。
油が切れただけなら、軸の部分に油を注せば、すぐに軽く動くようになります。この油が、微量ミネラルということです。 ところが、チェーンが切れていたら、つなげないと、自転車をこいでも動きません。
チェーンをつなげるのを、人間に当てはめると、主要ミネラルと微量ミネラルを、数ヵ月間、十分に補給を続けると、つなげることができます。完全につながらない場合は、手術が必要なこともあるでしょう。
一方、ミネラルをほとんど含まない食品を2〜3度連続して食べたとしても、たいして体調が悪くなるわけではありません。 2〜3日断食すると、体調がよくなる人が多いのですから、それは明らかです。
ところが、現代はミネラル不足食品ばかりになっているので、何年もミネラル不足の食事を続けることになって、心身を損ねる人が増えているのです。
食品と暮らしの安全 代表 小若順一
2010年11月1日発行 No.259より
安全基金の活動と考え方(60)「『無添加白だし(三合わせ)』の原料を食べよう」