栄養や食品安全にかかわっているミネラルの専門家が、ミネラル不足を見つけられず、われわれのような素人が不足を見つけたのはなぜでしょうか。
専門家はサプリメントによるミネラルの過剰摂取を心配し、そのリスクだけを研究したため、対極で起こっているミネラル不足が見逃されたのです。 アメリカの圧力でサプリメントの市場を無理やり開放させられ、研究と警告表示が十分でないまま、サプリメントの市場は拡大しました。
だから、過剰摂取による危険があると専門家は思っているのです。もちろん、われわれもそれに同感です。
今回の検査では、主要7ミネラルがすべて不足していて、特に不足が目立ったのはマグネシウムでした。 こういうデータが出てくると、サプリメントメーカーは、マグネシウムを主体としたマルチミネラルサプリメントを開発して販売し、そういうサプリメントを飲む人も増えるでしょう。
成分が多く入っているサプリメントが安上がりでいいと思う消費者が多いので、過剰摂取のリスクは高まるばかりです。 では、過剰摂取のリスクがなければ、サプリメントは有効なのでしょうか。それでも、やはりダメなのです。
『金属は人体になぜ必要か』(桜井弘著)には「111種類ある元素の中で、 人のからだの中で比較的多量に存在する必須元素は11種、微量に存在する必須元素は9種、きっと必須であろうと考えられている元素は23種であり、合計して43種」と書かれ、
「周期表の元素の約50%以上はからだにとって有用なものと考えられている」とあります。
人類は、多種類のミネラルを摂りながら生きてきたので、食品成分表に掲載されている少数の主要ミネラルだけを必要としているのではありません。 それは常識ですが、微量ミネラルは検査が難しかったので、カルシウムや鉄のような多量ミネラルだけが検査されて、その過不足だけが問題にされてきたのです。
食品の精製度が低い時代なら、それでも大きな問題は起こりませんでした。 しかし、現代は違います。水煮を始め、ありとあらゆる方法で精製された加工食品が多くなっているからです。
多量ミネラルが減っていれば、微量ミネラルも、それと同様に減っています。その残った微量ミネラルを、リン酸塩が奪って、食品から消失させているのです。
それなのに、サプリメントで主要ミネラルだけを補給しているのが現代人です。 今月号で明らかにしたマグネシウム不足の場合は、その裏に、元素周期表の同じ列にある「ストロンチウム」と「バリウム」が消失している可能性が潜んでいます。
この2つは、人体に必須とは証明されていませんが、16番目と24番目に多く含まれ、「たぶん必須」と考えられています。
このようなミネラルは、サプリメントでは摂れませんが、食事の質を上げるだけで、何の心配もなくなるのです。
食品と暮らしの安全 代表 小若順一
2010年5月1日発行 No.253より