食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
サミットでは、地球温暖化の最大原因と見なしているCO2を削減する方向で合意しました。 その手段の一つに、原発推進が入っているので、私たちとしては、今回の国際的な温暖化対策を支持できません。
一方、会場の外では、私たちの運動仲間にあたる自然保護団体が、相変わらず自然エネルギーをアピールし、マスコミもそれを「善」と報道していました。
これも基本的に支持できません。
古くからの読者にとっては、当然のことですが、新しい本誌読者のために、その理由を書いておきます。
太陽光や風力を利用するには、何らかの装置が必要で、それを製造するのに大量の石油(天然ガスを含む)を使い、CO2を排出しています。さらに、装置の寿命が終わったとき、廃棄のために石油を使い、CO2を排出します。
自然エネルギーを利用している部分だけを見るのではなく、トータルで石油を節約できているか、CO2排出を削減できているかを見る必要があります。
太陽熱や風力を使えば、石油で電力を造るよりも多くの石油を使用し、CO2も多く排出します。 遠い将来には、自然エネルギーに頼るようになるでしょうが、そのときにはさまざまな電気製品の消費エネルギーが桁違いに低くなっていることでしょう。
わかりやすいイメージは、文字盤がソーラー発電して動く腕時計です。 これと同じように、テレビなどの電気器具が、本体を構成するソーラーパネルで動くように省エネが進めば、自然エネルギーに頼れるようになります。
ソーラーパネルも、ラップぐらいの厚さのフィルムになって、しかも直射日光を浴びても10年もつぐらい耐久性を持つような性能になる必要があります。
今の技術レベルで、自然エネルギーから電力を得ようとすると、石油や資源を浪費し、CO2を増やすだけです。
こんな当たり前のことに、自然保護団体から批判の声が上がらないのは、自然エネルギーを利用するという「美しい話」に釣り上げられた人がたくさんいるからです。
石油や原発の「利権」を持っている人たちが、自分たちが儲けるために、効率の悪い自然エネルギーを地球のために利用する「美しい」話をして、自然保護派の人たちを釣り上げ、政府の金で石油を浪費させているのです。
多くの自然保護団体の中核を担っている人たちが釣り上げられていて、その釣り上げられた人たちは、いいことをしていると信じ込んで自然エネルギーを推進しています。それで、自然保護団体は自然を壊す役割をしている自然エネルギーを批判できないのです。
私たちは、トータルでエネルギーを考える槌田(敦)理論を紹介してきたので、自然エネルギーを推進していません。
2008年8月1日発行 No.232より