代表小若順一が月刊誌に連載していた「安全基金の活動と考え方」です。
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「企業との距離」 安全基金の活動と考え方(26)

食品と暮らしの安全基金代表 小若順一


掃除機の排気が汚いという私たちの主張を受けて、大きな成果を上げたのは韓国消費者連盟(鄭光謨会長)です。
私たちが測定器を持ち込んで韓国消費者連盟のスタッフに排気の実情を見てもらうと、すぐ空気環境の専門家にも見せて、私たちの方法に賛同を得ました。
それから1ヵ月後には、掃除機の排気問題をテレビで報道させ、それで沸き起こった世論を背景にメーカーと交渉して改良機種を出させ、政府に規制させることにも成功しました。
現在は、空気中に浮かぶ小さなチリをカウントして評価する私たちの手法をベースにした韓国独自の掃除機の排気性能基準が作られ、5つ星マークのついた掃除機が家電量販店で売られています。

このように成果を上げていく過程で、鄭会長から「小若さん、家電メーカーの社長に会って、掃除機の排気を改善してほしいと、どうして言わないのですか」と何度も言われました。 けれども、それは鄭会長の知名度が韓国で抜群に高いからで、また、年上を敬う韓国社会で、年下の社長が多くなっているからできることです。 私は知名度が高くないので、そんなことはとてもできません。
でも私は、被害者の救済はかなりできると考えていました。しかし、それもできないでいます。

サンヨーの排気循環式「ジェットターン」は、日本で最も汚い排気を出す掃除機です。 それを、「排気が出ない!」と宣伝して、呼吸器の弱い人に売ったのですから、不当表示はもちろん、赤ちゃんを、ぜんそくやハウスダストアレルギーにした犯罪行為だと思っています。
ですから、サンヨーに何度も質問状を出し、何とかして被害者に損害賠償をさせようと試みました。
しかし、つぶれかかっているサンヨーは、3台目から返品を認めなくなり、実質的なゼロ回答が続いて、被害者に賠償させることはまったくできませんでした。

日本では、仮にメーカーと直接交渉できたとしても、高いリスクがあります。 それは、37年前にホンダが、告発型消費者運動の先駆者だった「日本自動車ユーザーユニオン」の弁護士を含む幹部2人から恐喝されたと告訴し、後に有罪となった前例があるからです。 だから多くの消費者団体は、緊張関係にある企業には行かないことにしています。
マスコミの後押しがあれば、企業に乗り込んでも大丈夫です。しかし、掃除機の排気を問題にすると、すべての家電メーカーを敵にしなければならなくなるので、マスコミは頼りになりません。
もし私がサンヨーに乗り込んだら、彼らはすぐに警察を呼ぶでしょう。

私は、自分たちの実力と、日本の現状をよく見つめ、相対している企業とは適当な距離を取って活動するようにしています。


2008年2月1日発行 No.226より

安全基金の活動と考え方(27)『「臨機応変」「変幻自在」』

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