食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
森友学園へ国有地を売却した決裁文書には安倍昭恵夫人や複数の政治家の名前があったのに、
すべてなかったことにして文書を改ざんさせられた近畿財務局の職員が、今年3月自殺した問題について、
10月25日、「報道ステーション」は財務局・国有財産鑑定官OB6人へのインタビューを放送しました。
「忖度ではできません。もっと強い力が働いて、そういう行為(文書の改ざん)に追い込まれた」とOBの一人は証言。
この発言の後、番組は、国の土地が8億円引きで売られた森友問題がくすぶり続けているのは「あの一言」と、総理の国会答弁を紹介。
「私や妻が関係していたということになれば、これはもう、まさに、間違いなく、私は総理大臣も国会議員も辞める」
この答弁で閣僚と官僚が狂い、「学園との交渉記録は廃棄した」と佐川宣寿理財局長が国会でウソの答弁。ずっと後で、財務省は公文書の書き換えがあったと認めました。
別のOBは「端的言って、政治の圧力だと思うんですね。本省の中でも抵抗があった、というのがありますし、
ましてや現場では、ものすごい職員が抵抗したんですよ。それを無視して、押しつぶして、改ざんを決定、やらせる。そこまでやらせるのは、政治の圧力以外、何ものでもない」。
「改ざんを指示され、悩んでいた」と書き残して命を絶った職員の同僚だったOBは
「やっている仕事は何かというと、改ざんという、公務員にとってみれば、本当にどうしようもない仕事」と語り、
「見てる間に、顔つきが変わってきた。本当に無念だったなと思っております」と同僚の死を悼みました。
さらに別のOBは「麻生大臣とか、誰も責任取らずにそのままきております。
それはもう絶対許されへん。彼の無念さを思うと、本当にあってはならんことを起こしてしまった」と、後悔の念を述べました。
このように財務省OBが、政治の圧力と、政治家の責任を語ったインタビューでした。
実は、私の父も財務局の役人でした。
金融監察に入るときは、「相手は高級なお茶を出してくるから、水しか飲むな、と部下に言う」と、言っていました。
でも、そういう仕事を除けば、国の財産を管理するのが仕事なので、近寄ってくる人は、それを安く譲ってほしい人ばかり。
官官接待が認められていた50年以上前だったので、とても居心地のいい職場だったようです。
そんな職場に、政治家が法外に安い値段で国有財産を売ってほしいと、圧力をかけてくることは当時もよくありました。
それを撃退した自慢話を、その都度、私に話しました。
父の最後の殺し文句は、「心中しようか」。「それでも何とか」と言って来た人は一人もいないと言っていました。
「公務員は首にはならない」が口癖。ノンキャリなので出世してもしれていますが、
その出世をあきらめ、左遷を覚悟し、違法行為を拒否していたら、かなり出世しました。
自殺するほどの勇気があるなら、何でもできるはず。頭を柔軟にして少し覚悟し、違法な仕事を拒否して、相手が上司なので丁寧に「心中しましょうか」と言えばよかったのです。
2018年12月号No356より