食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
「カルシウムは全年代で少し不足」
「鉄は8歳〜17歳の男児、8歳〜14歳の女児、月経中の女性が少し不足」
「亜鉛は10歳以上の男子、8歳以上の女子が少し不足」
国は、こう認識しています。
しかし、その根拠は、食品成分表を元に計算した推定値です。
実測すると、月刊「食品と暮らしの安全」で指摘してきたように、主要ミネラルのカル・マグ・鉄・亜鉛がまったく足りず、銅も少し足りません。
国は間違った現状認識を持っているのです。
『市販食品成分早見表』だけは、メーカーから集めたカルシウムと鉄のデータを載せていますが、資料が古く、マグネシウム、亜鉛、銅は、項目がありません。
また、数値が載っておらず、「?」となっている食品がたくさんあります。 「0」ならいいのですが、「?」では、含有量が少ないのか、検査していないのかわかりません。
『主食・主菜・副菜料理成分表』は、665料理の作り方と栄養成分が掲載され、主要ミネラルの値が載っていたので、 手作り料理の値を、加工食品の実測値と比較する今月号の基本資料として用いました。
そして、工場で生産された総菜のミネラル実測値は、手作り料理の計算値より、ほとんどが少なめになり、7割以上少ないケースもあることがわかりました。
現代栄養学の基本的な問題点は、手作りでない加工食品の栄養計算を、手作りのデータを用いて行っていることです。 そのため、基準より大幅に不足している栄養素があるのに、そのことに気づかず、問題にならないのが、日本の現状です。
おそらく8割前後の日本人が、微量栄養素の不足で、多少なりとも心身の健康を損ねています。
その証拠が、月刊「食品と暮らしの安全」で掲載している国光美佳さんの連載です。
食事を変えるだけで、不治の病と診断されていたり、慢性病で苦しんでいる人を、いとも簡単に改善させています。 これまで、アスペルガー症候群、ADHD、自閉症、学習障害、言葉遅れ、自傷癖、うつ病、躁鬱病、統合失調症など、多数の心身の病が、劇的に改善しています。
しかし、他人の食事を変えさせるのは非常に難しいこと。だから、治せるのは国光さんの特技という方がいいでしょう。
しかし、治る理論は明確です。
「病気になる」と国が決めた基準どおりの食事をしている人を、健康を保証した基準を満たす方向に食事を改善していくと、症状も改善していくのです。
だから、基準どおりのことが起きています。
5大栄養素のミネラルを専門家が軽んじているので、このままではミネラル不足はさらにひどくなり、国民の心身の不調で、日本は没落の道を歩みそうです。
ミネラルの重要性を理解するには、『金属は人体になぜ必要か』(桜井弘著、ブルーバックス)がいいのですが、この本を読んだ栄養士に出会ったことはありません。
この本の内容を、栄養士の資格試験に出せば、栄養士になる学生と、教える先生がミネラルの勉強をするようになるでしょう。
2014年9月1日発行 No.305より