特集◆自閉症でも奇跡② Tweet
月刊誌『食品と暮らしの安全』2009年5月241号掲載
自閉症でも奇跡 驚きの改善②
「今のこうちゃんは、自閉症なのか?」
高機能自閉症と診断されているこうちゃんと、
春休みに2 度会い、彼のすばらしい能力への驚きと
感動が交錯する時間を過ごしました。
「人とのかかわりが難しい、こだわりが強い、変化に適応しにくい…パニックに陥りやすい」
これらが「自閉症」の特性の1つです。
天然液体だしで良くなったこうちゃんに会うと、
これらの概念とはかけ離れていて伸び伸びと能力を発揮する姿に、新たな感動を覚えました。
●時間配列が苦手とは思えない記録
「これも、ぼくが作ったんだよ」 こうちゃんは、たくさんの工作や絵、作文をそろえて待っていてくれました。
社会科見学の記録用紙は、こうちゃんが過去の出来事を順序立てて、鮮明に記述することができることを見事に示していました。
以前の記録用紙とは、文字数も内容も明らかに違います。これを、授業時間内に自分の力で書き上げたのです。 「ここに、こうしてメモもしてきたんだよ」と、数値や年代のポイントをメモした場所を教えてくれます。
同時に2つのことをするのが苦手なはずなのに、「説明を聞きながら、メモもとることができたのです」と、お母さんも驚きます。
●共同作業を楽しんで
「相手が何を考えているのか、何を求めているのかなど、相手の行動の意味を推測したり、
理解したりするのが得意ではない」と『自閉症の本』には書かれています。
この症状を覆したのが感想文。
「○○さんもきっとよろこぶよ」と、登場しない○○さんの心情まで思いをめぐらせていました。
相手の心情を理解していることは、妹さんとのかかわり方でも、随所にみられました。
パステルの粉を使って、色の粘土をつくり、
「これは○ちゃん、使っていいよ。ここに使う粘土は○ちゃんが作ってね」と、
2人でルールを作って展開したり、作業の段取りを決めて一緒に作り上げて、楽しそうでした。
●感情をコントロールできる
翌週に再度訪問して、今度は私も一緒にダンボール遊びをしました。
ダンボールを使い始めると、トンネル遊びから家、パーティーごっこへと、5時間にわたって集中、
次々に遊びを展開していきます。
理科の好きなこうちゃんならではの電球や星空も盛りこまれ、どうしたらもっと明るくできるか、
この高さに電球を止めるにはどうするか、夜空の暗さを表すのに何を使うかなど、
これらの作業をすべて自分で考え、思い描いたイメージを一つひとつ達成していく工程が随所にみられました。
夜空を作るときには、思い通りの素材がなかなか見つかりませんでした。 それでもイライラせずに今ある素材を駆使して気持ちを立て直し、「コレを使えばいいよね」と納得して進め、
妹の意向も聞き入れながら展開していく様子も見られました。
「感情をコントロールする力が、以前よりもついてきた」とお母さんも嬉しそうです。
●「あっ、ごめん」
こうちゃんは何かがひらめくと、驚くほど素早く動くことがあります。
以前は、そのまま突進して、人にぶつかってしまう傾向があったそうです。
この日も、急に動いて、こうちゃんの手が、座っていた私の肩にぶつかりました。
すると、とっさに「あっ、ごめん」と声をかけてくれたのです。
近くで見ていたおかあさんは、「今、ごめんって言いましたね。それも自然に」とびっくり。
これまでは、ぶつかっても気にせず、突き進んでしまうことが多かったそうです。
それが、この日は私をよけて、それでも少し手がぶつかると、動きながら声をかけることができたのです。
前日は、満員電車にお母さんと離れた場所で、ぎゅうぎゅうに押されながらも、落ち着いて乗っていられたそうです。
以前は「嫌だよ、おかあさん…」と耐えられなかったのに。
●創造力、集中力、成し遂げる力
ノートの表紙のハムちゃんのキャラクターを、紙粘土で再現する遊びを始めると、 顔のパーツを下書きしてから、ハムちゃんを作りあげ、 瞳のキラキラしているところまで細かく表現し完成しました。(右写真)
手先を器用に使い、細部まで観察して、ていねいに作り上げた作品。
ここまでこだわりをもって、成し遂げる力をもっていることと、その意欲や集中力には目をみはるものがあります。
●希望があふれるようになった
こんなに素晴らしい力を発揮し、たくさんの希望にあふれるようになったこうちゃん。
ダシ摂取直前の4ヵ月前にパニックを起こして、 「生きていてもしかたないんだ」と叫ばなければいられなかったこうちゃんの姿は、もう想像もできません。
初めての集団生活で、お母さんも大きな挫折感に見舞われた幼稚園時代。
「またこうちゃんがやった…」とクラスで起きる問題はほとんど彼が原因と思われ、 困った子というレッテルを貼られた小学一年生の時代。
このこうちゃんにも、問題ばかり起こすと受け止められた時代があったのかと思うと、その時間を取り戻すことができないかと、やりきれない思いがこみ上げてきました。
●親子の距離を置いて
「発達障害の子どもを持つ家庭は、親子共倒れになる場合も多いのです」と、お母さん。
ダシ摂取後の変化を振り返りながら
「もう、今までのこうちゃんだと思って接していてはいけないのですね」
「自分で感情のコントロールができるようになってきているので、自分が持っている症状と、これからは上手に付き合っていってほしいです」。
「私も、この子と少し距離をおいて付き合っていかなければ」と、これからのこうちゃんのことを明るく話してくれました。
国光美佳(『食事でかかる新型栄養失調』著者・色彩心理インストラクター)
(月刊誌『食品と暮らしの安全』2009年5月No241号より)
>>自閉症でも奇跡 驚きの改善③(2009年6月号No242)
>>ミネラル不足食品ばかりでは病気に罹る(症例別目次)
関連書籍
⇒「摂食障害は治る!」
⇒「キレなくなった子どもたち」
⇒「心身を害するミネラル不足食品−実測データ総まとめ集−」(月刊「食品と暮らしの安全」2017年2月号)
⇒「食べなきゃ、危険」