特集◆自閉症でも奇跡③ Tweet
月刊誌『食品と暮らしの安全』2009年6月242号掲載
自閉症でも奇跡 驚きの改善③
高機能自閉症のこうちゃんが天然液体ダシの摂取を始めて5ヵ月。
学校生活に適応する力が伸びて、挑戦意欲や話し合う力もつき、
充実した小学4 年生の新学期をスタートさせています。
●「音楽会、聞きにきてね!」
「お母さん、○日の参観日で音楽会があるから聴きに来てね」
1週間先の参観日の予定をうれしそうに話すこうちゃん。
学校の行事をお母さんに予告したのは初めてのことでした。 これまでは、学校の連絡事項は、お母さんが聞き出すか、持ち帰ったプリントを入念にチェックしていたのです。
ダシ摂取後、苦手だった時系列の把握を克服し、時間のやりくりができるようになったこうちゃんですが、 さらに長い時間にわたって見通しが立てられるようになってきています。
参観日の当日も、一番後ろで見ていたお母さんにもしっかりと聞こえる大きな声で発表し、 自信をもって堂々と演奏したこうちゃんの姿に、お母さんは思わず涙がこぼれました。
●学校での出来事を話すように
学校での出来事も家でたくさん話すようになりました。
発達障害の子どもは、些細なことに対してもこだわりが強いため、集団生活に適応できない場合が多いのです。
学校での出来事を聞いても答えられないのは、忘れてしまったからではありません。
幼児期に叱られる体験ばかりで、充実感や満足感がなく、「楽しかったこと」として記憶されていないからです。
こうちゃんも以前は、学校のことを聞いても話さないことが多かったのですが、 最近は、自分からその日の出来事をお母さんに伝えることが増えてきました。
幼児期の悪影響からも脱して、「楽しかった」「おもしろかった」と記憶できるほどに、
集団生活に適応できるようになってきたのです。
友だちと一緒に活動する心地よい体験が増え、集団の中でも充実感が得られてきた様子が伺えます。
最近は、自主学習でも「クラスで一番に」と、自分で目標を設定して頑張ったり、 制限時間を決めて課題に挑戦するなど、意欲的な取り組みがよく見られるようになっています。
●感情の伝達力が出てきた
「国語は苦手、作文は好きじゃない」
こう言っていたこうちゃんですが、新学期が始まって間もなく、学級通信にこうちゃんの作文が紹介されました。
これまでは、順序立てて書くのが困難だったため、「〜だった」「〜した」と事実を並べるのがやっとで、 授業時間内に仕上げられないこともしばしばありました。
それが、時間内に終わらせることができただけでなく、「〜だと思いました」「〜したい」という記述が見られたのです。 「こんなに自分の感情を文章化できるようになってきました。
感じた気持ちを言葉で表現できるようになったことは、相手の状況を感じ取って行動に表すことにも影響しているような気がします」と、お母さん。
最近のこうちゃんは、自分の意見が通らない状況でも、落ち着いて話し合い、気持ちを納得させることができるようになってきています。 グループカウンセリングの先生からも「最近、お友だちの意見も認められるようになりましたね」と言われました。
共同作業の時間でも、トラブルを起こさずに友だち同士で相談しながら進めていくこうちゃんの姿を見て、お母さんはほっとしました。
●「ママ、ダシ入れた?」
食欲もあり、摂取後の体調の良さを感じているこうちゃん。
「ママ、ダシ入れた?」と、必ず食事の内容をチェックをするそうです。
「これまでも、食生活には気をつかっていたけれど、最近は水煮食品や、 インジェクションの肉や魚を見極める目もついたし、お塩もちゃんと選ぶようしています。日本の食の問題にも意識が向くようになりました」と、お母さん。
今では、煮干しを酢につけて、おやつやおつまみに出すようになっていて、こうちゃんもそれを食べています。 「ママこれ美味しいね」と言う言葉もとびかう家庭の食卓。
「私も一緒にダシを使い始めて、本当にイライラが減りました。親がどう感じているのかに、特に敏感な子たちなので、親子で一緒に使うのがいいですね。
私たち大人がイライラしなくなることは、この子たちの精神面にも作用しているのですものね」 こうちゃんだけでなく、家族全体の食事にも変化が起きています。
●クラスのみんなで育っていく
登校は、3学期の最終日まで、お母さんと手をつないで学校に行き、握手をして別れるのが習慣でした。
それが4月からは、おかあさんから離れて、1年生を引率して登校するようになっています。 横断歩道を渡るときにも、安全を確認して1年生を誘導するこうちゃん。
急に成長した姿に、おかあさんは胸が熱くなりました。
「習慣化したことを止めることに強い不安をもつことが多かったのに、 急に私を必要としなくなってびっくりしました。嬉しいような寂しいような気持ちです」
こうちゃんに、話し合う力がついてきているのと同時に、周りの子どもたちも解決方法を考える力がついてきています。
担任の先生にも「もう今までのように心配しなくても大丈夫ですよ」「こうして、みんなで育ち合っていくのですから」と言われました。
先生のお陰で、友だちが互いに受け入れ合いながら成長していける雰囲気の中で、さらに意欲や頑張ろうとする力が出てきているこうちゃん。
非常に能力が高いこうちゃんだけに、ダシの摂取で感情のコントロール力がつくと、 集団への適応力がぐんぐん伸びて、さらに素晴らしい力を発揮していく基盤が整えられてきているようです。
高学年へ向けてのこうちゃんの成長に期待が膨らみます。
国光美佳(『食事でかかる新型栄養失調』著者・色彩心理インストラクター)
(月刊誌『食品と暮らしの安全』2009年6月No242号より)
関連書籍
⇒「摂食障害は治る!」
⇒「キレなくなった子どもたち」
⇒「心身を害するミネラル不足食品−実測データ総まとめ集−」(月刊「食品と暮らしの安全」2017年2月号)
⇒「食べなきゃ、危険」