食品と暮らしの安全基金代表 小若順一
地球環境問題のような大きなテーマに対する国連機関の結論や、意思決定、決議などを、私たちは重視しません。 もともと軽視する傾向がありましたが、食品では最高に権威ある国連機関の「コーデックス」に行き、議論を聞いて、信用できないことに確信を持ちました。
「バイオテクノロジー特別部会」を例に挙げると、生命科学に対する意見は無数にあるのに、それを一つに集約していかねばならない宿命を持っている会合です。
すると議論を集約していくために、ある問題に対して、すでにどこかの国連機関が一歩でも踏み出して議論を進めたり、結論を出していれば、そこを出発点として、議論をスターとさせていくことになります。異議があっても、その分野の専門家でないからと言って、議論は打ち切られます。
形式を追求し、真実を追究しないのです。 その上、アメリカの主張が事実上の優先権をもって扱われるので、事実に反する結論が導き出されることがあります。
もう一つ、反対勢力の少ない意見から見解がまとまっていく傾向があって、これも、正しいかどうかとは別次元です。
会合の現場では、意見がまとまらないと困ると、みんなが思っています。期限内で議論がまとまりそうにないと、みんながハラハラし始めます。 利害関係者が少なくて、小さな領域の問題は、反対意見が出にくいので、その意見はすぐに合意して通るのです。
どこかの国連会合で承認された意見は、コーデックスのメンバーには反対者がたくさんいても、無視される仕組みです。
こういう現状を見るまでは、世界の専門家が集まった国連機関でも間違うことはあると、控えめに思っていました。ところが、コーデックスのように最も良心的な専門家が集まったと思われる国連機関ですら、現状がこうなのです。業界の専門家が集まった専門機関や、業界の力が強く反映されやすい国連機関では、間違いだらけの可能性が高いと思うようになりました。
それを報道するマスコミも、大きなテーマは自分で考える手がかりが少ないので、権威ある国連機関の言うことを基礎にして、そこから自分たちの論陣を張ろうとします。
そういう傾向から、私たち自身も逃れることはできませんが、より正しい判断をするには、常に批判的な姿勢を持っている必要があると考えています。
本誌では、「CO2は地球温暖化の原因ではない」と言う槌田敦氏の説をずっと報じてきました。今、このような説は、世界のあちこちで言われ始めています。しかし、京都議定書の前からあるこの説を、マスコミは最近まで取り上げませんでした。
そのため、CO2対策は地球温暖化への対策になる、という妄信のもとで間違った政策がとられてきたのです。
環境問題や安全性については、私たちはかなりの実力を持っているので、主流の説に疑問があれば、それを検証し、考えを練り直すことを、これからも続けていきます。
次回は「いい友を持つ」の予定です。
2007年5月1日発行 No.217より