他の方々の発言にもありましたが、私達は、廃棄物が適切な方法で処理されなかった場合、環境や健康、安全性に、深刻な問題を引き起こすことを認識しなくてはなりません。
廃棄物を適切な方法で処理しなかった場合、以下のような危険性があります。
1) 労働者への被害が出る
2) 大気、水、土壌が汚染される
3) 火災の危険性が増す
4) 下水に廃棄物が入り、微生物による下水処理ができなくなる
環境保護省の情報によると、香港では、PCBを含む製品は現在もう販売されていません。ですから、PCB廃棄物が出るのは、過去に販売され、現在まだ使用中の製品からのみ、ということになります。
小型のコンデンサーの場合、低塩素のPCBがたいてい50グラムほど、コイルの中に含まれています。これらの小型コンデンサーは、蛍光灯のスターターユニット、家庭用のモーター、そして軽工業の電気製品に使われています。
PCBを含んでいるかも知れないものを捨てるときには、検査によってPCBを含んでいないことが証明されない限り、危険ゴミとして扱わなくてはいけません。
PCBを含む製品の判別
PCBを含むかどうかは、きちんとしたラベルのついた設備や製品であれば、簡単に判別できます。ラベルに書かれた商標が、PCB含有製品のリストにあるかどうか、調べればよいのです。商標によって判別できないときは、メーカーか販売元に情報を求めるか、検査に出して、PCBが入っているかどうか分析してもらえば分かります。
コンデンサーの場合、1930年代以降に製造されたものは、PCBを含んでいるといってよいでしょう。ノンPCB、つまりPCBではなく代替品を使っている、ということが、ラベルに明記されていない限り、サイズや用途にかかわらず、コンデンサーにはPCBが含まれています。
PCBの除去
製品にPCBが含まれていることが確認されたら、次はどのようにして毒性のある部分を除去するのか、考えなくてはなりません。除去作業は、分析とモニタリング同様、訓練されたスタッフによって適切な条件のもとで行わなくてはならないことになっています。
PCBを除去する方法のひとつに、製品を鉱物油で洗い流す方法があります。この方法によってほとんどのPCBは除去できますが、製品の隙間や、穴が開いているところ、そして内側の表面にはPCBが残ってしまいます。したがって、繰り返し鉱物油を使い、洗い流さなくてはなりません。この作業にはとても時間がかかり、最終的に2ppmくらいのレベルまで除去できますが、それと引き換えに、多量の汚染された鉱物油が生産されます。
PCB廃棄物処理の規制
香港では、PCB廃棄物は、廃棄物処理法令により、「化学物質廃棄物」に分類されています。そしてこの法令によって、PCB廃棄物の梱包、表示、保管、回収および処理も規制されていて、PCB廃棄物が(i)訓練された者により取り扱われ、(ii)許可されたもののみにより移動され、(iii)安全な場所に保管されるよう、定められています。
廃棄物処理法令では、古い製品も含め、PCBを含む製品を保有している場合、そのことを環境保護省に届け出なくてはなりません。また、それらを廃棄する時も、届け出なくてはなりません。環境保護省は、その届け出をもとに、最適な処理の方法を決定します。
処理する前のPCBの保管
環境保護省への届け出をし、処理方法が決定されるまでの間、PCB廃棄物の保有者は、それを決められた保管場所に保管しなくてはなりません。この保管場所は以下の条件を満たす必要があります。
a. |
化学物質ゴミの保管以外の目的で使用しないこと |
b. |
最低3方が壁で囲まれていること |
c. |
万が一漏れ出ても、室内に有害なガスが充満しないよう、適切な換気設備が整備されていること |
PCB用のコンテナ
2箇所の留め具付き金属製容器
PCB廃棄物の表示
PCB廃棄物処理の規制
推奨されているPCBの安全な処理方法は、1100℃以上で2秒以上、酸素含有量が3%を超える条件で焼却することです。この処理は、化学物質用の廃棄物処理施設か、もしくは海外の実績のあるPCB処理業者に依託することができます。もしも海外の施設に頼む場合は、事前に環境保護省の許可を取る必要があります。
通常、PCBを浄化した部品や、家庭用の電気製品などに使われている小型のPCB入りコンデンサーの場合は、焼却処理ではなく、埋め立てによる処理をしてよいことになっています。適切な方法で浄化したコンテナや、ポンプや熱交換機などの機器がこれに相当しますが、もし埋め立てするにはPCB濃度が高すぎると判断された場合、大型コンデンサーと同様、焼却処分に回されます。
管理の記録
廃棄物の管理に関しては、廃棄物の発生した時点から最終処分地に至るまでのすべての動きを記録しておく、「ゆりかごから墓場まで方式」の管理が導入されています。
廃棄物の保持者は、廃棄物を回収してもらうために「トリップチケット」と呼ばれる指定の用紙に記入します。そして、控えを1枚保管します。この控えが、回収を依託したことの証明になります。回収を請け負った人は、残りの用紙と廃棄物を次の請負人まで届け、控えをもらいます。廃棄物が最終処分場まで届いたらオリジナルの用紙は責任者が保管します。
「トリップ・チケット」システム
PCBの代替品への交換
PCBの代替品で最も使用されているものは、パラフィンなどの鉱物油です。しかし、鉱物油を使うということは、PCBが開発される以前の時代に戻る、ということを意味します。そもそも、なぜ鉱物油の絶縁液がPCBにとって変わられたかといえば、PCBの方が燃えにくい、という性質があったからです。そのPCBが、代替品の鉱物油に戻ったことで、火災の危険を心配する声もあります。オーバーヒートによる火災のリスクを減らすため、絶縁液のまわりを不活性ガスで覆うなどの措置を取った設備もあります。また、他の有機塩素化合物や、新たな代替品の開発も提案されています。
環境省によると、蛍光灯のコンデンサーにはノンPCB製品が多く使われるようになっていて、家電製品のコンデンサーのスタートモーターでPCBを含んでいるものは、デザインチェンジなどで、減ってきているようです。
ここまでいろいろな法律や規制について話してきましたが、廃棄物処理(化学物質ゴミの)(一般)法令と、PCB廃棄物の取り扱い・移動・処理の実行規範などの詳細は、香港政府のホームページからアクセスできます。
結論
PCBの持っている危険性を多くの人が認識するようになっています。そのため、PCBを使用した製品の使用は、減ってきています。しかし、PCBを含む古い機器の、代替品への交換には何年もかかるため、PCB廃棄物は今後も増え続けます。したがって、すべての国で、PCB廃棄物の安全な処理を行い、また、廃棄物保有者へのPCB廃棄物処理に関するガイドラインを作ることが、環境への影響を最小限にするために重要だと思います。
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