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 先進国では、1970〜80年代にPCBの生産が禁止されました。20年以上も前のことですが、いまだに問題は解決していません。それは、PCBの処分が終わっていないからです。現在残っているPCBには、(1)使用中のもの、(2)保管されているもの、(3)管理が行き届かず不明になっているものの、大きく3つに分けられ、どれも問題を抱えています。


(1)現在も使われているPCB機器

 多くの国でPCBの製造は禁止されていますが、禁止以前に作られ、使われているPCBを含んだ機器は、そのまま耐用年数が終わるまで使うことが許されている場合があります。しかし、使用を続けることは、環境を汚染する危険性を伴っています。

 現在でも使われているPCBを含んだ製品には、開放系で使われているものと閉鎖系で使われているものがあります。開放系は、外部環境と常に、接していることを意味しています。環境中に漏れ出やすいため、問題です。例えば、ビルの窓やドアとコンクリートの間の断水や断熱に使われるシーリング材などが、これに当たります。シーラント中のPCBは微量といえども揮発し、室内空気を汚染していることが、スウェーデンの研究者によって報告されています。ビルを壊すときにも、これら廃材の処理が問題となるでしょう。PCB汚染物質として処理を進めなければなりません。

  では、密閉されて、漏れないと考えられている閉鎖系の製品なら、問題はないのでしょうか?実は、そうではないのです。

 PCBが漏れないという前提の上で、トランスやコンデンサーといったPCBを含む閉鎖系の機器は、今もなお使用が続いています。これらは、耐用年数が終わるまで使うことが認められていますが、使用を続けることは、様々な問題を含んでいます。
写真:愛媛大学沿岸環境科学研究センター(CMES)提供
写真:愛媛大学沿岸環境科学研究センター(CMES)提供

写真:蛍光灯 一つは、事故が相次いでいることです。耐用年数が切れてから交換するのでは遅いのです。欧米では、PCBの入った安定器やトランスの、火災や破裂事故が起こっています。数十年経過すると、機器が老朽化し、突然破裂することがあるのです。日本でも、近年、学校で蛍光灯の古い安定器が破裂し、PCBが、数名の児童の頭に降り注ぐという事故が数件、起こっています。このような事故を防ぐためにも、耐用年数ぎりぎりまで使うのではなく、一刻も早く、使用をやめるべきです。

 閉鎖系の機器を使用することの問題点はもう一つあります。というのは、閉鎖系とは言っても本当は密閉ではなく、PCBは機器の隙間から揮発し、漏れ出ているのです(詳しくはこちら)。なるべく早く使用を中止し、新しい製品と交換しましょう。

(2)保管の問題
写真:蛍光灯 耐用年数を終え、廃棄されたPCB機器は、油を抜き取り、適切な処理を行わなければなりません。直ちに処理を行うべきですが、施設の処理能力もあり、全てを一度に処理することはできません。そのような場合は、保管が必要となってきます。日本のように、処理施設がほとんどないところでは、全てのPCB廃棄物を保管する必要があります。これには、維持費用がかかるだけではなく、大きなリスクが伴います。

 まず、保管をするだけでも、環境を汚染します。Watanabeら(1996)が、PCBが含まれた使用済み安定器の保管場所の空気を測定する実験を、タイで行っていますが、保管場所に近い所は、5m離れた場所に比べて、高濃度のPCBが検出されています。安定器を撤去すると、同じ地点の大気中の濃度が半分に減少したこともあり、安定器のPCBが汚染の原因の一つであると考えられます。使用でなく、保管中のものからもPCBは少しずつ漏れ出るのです。

 そして、保管が長期化すると紛失・不明や事故につながる可能性が高くなります。所有者が変わったり、倒産・廃業によって、管理が行き届かなることが原因として考えられます。

(3)管理が行き届かずに不明になっているもの
写真:安定器を重ねた写真 紛失とされているものは、どのように扱われているのでしょうか?おそらく、適切に処分されていない場合が多いと推測されます。汚染されていない機器と同様の解体が行われ、環境汚染を引き起こしているかもしれません。廃棄物最終処分場に投棄されている可能性も否定できません。また、PCBに関する情報が少なく、国内の法規制が緩い発展途上国に、違法に輸出されている可能性も考えられます。残念ながらそれらに関する信頼できる情報がほとんどないのが現状です。紛失したものは、対策の立てようがないのです。

 とにかく、これ以上のPCB廃棄物の紛失を防ぐことが強く望まれます。管理を徹底させること、PCBを含む恐れのある機器を廃棄するときには、ラベルや油を調べ、PCBが含まれていないことを確認することが必要です。そして、保管ではなく、処理を進めていくことです。

 
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