TOP

なくそうPCB

PCBとは

世界中を汚染

なぜ汚染は止まらないのか

2002年 PCB シンポジウム(日本)

2003年 PCB シンポジウム(マレーシア)

日本子孫基金とは

地球環境基金について

参考文献
世界中を汚染

野生動物からの警告
| 前へ | 一覧 | 次へ |

海鳥 PCBは、土壌、大気、水など、あらゆる所に広がり、世界中が汚染されています。そのため、そこに住む生物も、PCBを取り込んでしまいます。特に、海に棲むイルカやクジラなどの海棲哺乳類、外洋で生活する海鳥に、PCBが高濃度に蓄積しています。

イルカ  陸上で使われたPCBが、工業活動とは関係のないイルカやクジラを汚染しているとは、考えられないかもしれません。しかし、環境中に流出したPCBのうち、約35%は沿岸堆積物に、約60%は外洋の海水に残っているとの見積もりがあるように、最終的に、PCBの多くは海にたどり着くと言えます。

 


地球環境中のPCB見積もり量

環境
PCB 量 (t) PCB量におけ
る割合(%)
世界生産量にお
ける割合(%)
陸上および沿岸 大気
500
0.13
 
川と湖水
3,500
0.94
 
海水
2,400
0.64
 
土壌
2,400
0.64
 
堆積物
130,000
35
 
生物
4,300
1.1
 
総量 (A)
143,000
39
 
大気
790
0.21
 
海水
230,000
61
 
堆積物
110
0.03
 
生物
270
0.07
 
総量 (B)
231,000
61
 
環境中の総量 (A+B)
374,000
100
31
分解・焼却 43,000

4
電気機器として使用中のもの、
廃棄物処分場や埋め立て地に
捨てられているもの
783,000
  65
世界生産量
1,200,000
  100
S. Tanabe (1985). J. Oceanogr. Soc. Japan, 41, 358-70.

アザラシ  海が汚染されるということは、それをプランクトンや魚など、海の生物が取り込み、汚染されることを意味します。取り込んだPCBは分解されにくいため、体内に蓄積されていきます。イルカやクジラは、その汚染された魚などを食べることになり、結局、もっと高濃度で汚染されてしまうのです。特に、海棲哺乳類は海の生活に適応するため、厚い脂肪層を持っていて、油に溶けやすいPCBが、蓄積しやすいのです。

大量死 さらに、イルカやクジラは、陸上の動物よりもPCBなどの代謝能力が低いため、汚染物質の影響を受けやすいと言われています。近年、海棲哺乳類の大量死事件が報告されていますが、PCBもその引き金の一因になっている可能性が疑われています。例えば、PCBがアザラシの免疫系を撹乱し、ウイルスに感染しやすい状態にしたため、アザラシがウイルス感染により大量死したことを裏付ける報告が出ています。

 これら野生動物に見られる現象を、私たちは、警告として受け止めるべきです。人間に同じ様な影響が見られてから、対策を始めたのでは遅いのです。




さまざまな地域の鯨・イルカ類における総PCB濃度の比較(wet wt.)


場所 調査年 PCB濃度 (μg/g)
イシイルカ ベーリング海 1985 13
イシイルカ 北東部北太平洋 1987 19
マイルカ 北西部北太平洋 1987 22
ネズミイルカ 北海道、日本 1993 8
イシイルカ 日本海 1989 34
セミイルカ 北部北太平洋 1991 30
カマイルカ 北部北太平洋 1991 27
スジイルカ 三陸沖、日本 1992 37
サワラクイルカ 紀伊半島沖、日本 1991 51
ウスイロイルカ 香港 1993-1997 31
スナメリ 香港 1993-1997 20
ハシナガイルカ ミンダナオ海, フィリピン 1996 2.5
サワラクイルカ ミンダナオ海, フィリピン 1996 6.2
ハシナガイルカ ベンガル湾, インド 1990 2.2
イシイルカ 北部北太平洋 1980-1985 8.6
スナメリ 瀬戸内海, 日本 1985 320
ツチクジラ 日本太平洋沿岸 1985 2.3
シャチ 日本太平洋沿岸 1986 370
ネズミイルカ 黒海 1993 22
スジイルカ 東部地中海 1990 390
ハンドウクジラ イタリア沿岸 1992 590
ハナゴンドウ イタリア沿岸 1992 320
マイルカ プック湾, バルト海 1989-1990 31
シロイルカ セントローレンス川 1987-1990 160
シャチ ブリティッシュコロンビア沿岸 1986-1989 22
オキゴンドウ ブリティッシュコロンビア沿岸 1987-1989 40
ハナゴンドウ ブリティッシュコロンビア沿岸 1988 1.7
イシイルカ ブリティッシュコロンビア沿岸 1987-1988 4.5
ネズミイルカ ブリティッシュコロンビア沿岸 1987-1989 8.4
Minh et al., (2000)Water Science and Technology, vol. 42, Nos 7-8, 231-240


写真:愛媛大学沿岸環境科学研究センター(CMES)提供

 
| 前へ | 一覧 | 次へ |


Copyright(C) 2003 日本子孫基金, All Rights Reserved.
Supported by 地球環境基金