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イラスト:PCBの化学構造の図
PCBの化学構造の図

便利さゆえに広く使われたPCB
     PCBとは、正式名称をポリ塩素化ビフェニール(Polychlorinated Biphenyl)と言います。二つのベンゼン環(ビフェニール)に塩素がついたものです。塩素の数や結合する場所が異なるものを異性体といい、全部で209種類存在します。そのうち14種類の平面構造を持つものはコプラナPCBと呼ばれます。異性体ごとに物理的性質や毒性が異なり、毒性を評価するときに重要になってきます。

      同じ商品名(例えば、アロクロール1221、1232、1242など)でも、含まれる異性体の量や種類のパターンに違いがあります。形状も商品によって、無色の油状であったり、粉末であったりと様々です。

      PCBは、耐熱性、絶縁性、化学的に安定であるといった性質を持ちます。このような、他の物質にない優れた性質が注目され、工業的に広く使われました。ところが、とても危険な物質だったのです。

    PCBの特徴

    利点
    欠点
    絶縁性を持つ 生物分解が困難
    揮発しにくい 環境中に残留する
    燃えにくい 生物の脂肪組織に蓄積するし、分解が困難
    水に溶けにくく、
    有機溶媒に溶けやすい
    発ガン性が疑われ、
    様々な毒性を持つ


PCBのマイナス面が注目されるきっかけとなったカネミ油症事件
     1968年、日本で、カネミ倉庫(北九州市)が作っている「カネミライスオイル」に、PCBが混入する事件が起こりました。PCBは、粗製油を脱臭する行程で使う脱臭缶内の蛇管という部分に、熱媒体として循環させて使われていました。この蛇管に穴が空きPCBが漏れ、食用油に混入したのです。

      汚染した油が販売され、それを食べた人たちに、皮膚の色素沈着、胎児死亡率の増加、塩素座そうなどの健康被害が現れました。人への被害が取り上げられるよりも早くから、汚染油で作った配合飼料も出回り、鶏の大量死事件が、起こっていました。大量死事件の時に、PCBの問題に取り組んでいれば、カネミ油症事件は、起こらなかったかもしれません。

     カネミ油症患者として、被害を届け出た人は、1万4000人を超えました。30年以上経過したものの、油症患者は今でも後遺症に苦しめられています。後に、油にダイオキシンの一種、ポリ塩素化ジベンゾフラン(PCDF)も含まれていることが分かり、ダイオキシンによる被害であったことを、2002年になってようやく国も認めました。

      ダイオキシンとPCBによる複合的な健康被害であったものの、当時は、この事件をきっかけに、PCBの毒性面に注目が集まり、世界的にPCB禁止の方向に動いたのです。


PCBの持つ様々な毒性
     事故などで、一度に大量のPCBを暴露した場合、その直後に、皮膚の発疹などが現れます。特に高濃度の暴露の場合、色素沈着や塩素座瘡、粘膜の刺激、肝機能障害、血清中性脂肪の増加、免疫機能の低下が起こります。

     こうした急性的な影響だけではなく、慢性的な毒性もPCBは持ち併せています。実験動物で、肝臓に腫瘍ができることが報告されており、人に対しても同様に発ガン物質である疑いが持たれています。IARC(国際ガン研究機関)では、PCBを「ヒトに対して恐らく発ガン性がある」物質(Probably carcinogenic to human: 2A)に、米国国家毒性計画では、動物実験で発ガン性が確認されている、「ヒトの発ガン物質であると疑われる」(reasonably anticipated to be human carcinogen)に分類しています。

    PCBの発ガン性

    IARC(国際ガン研究機関)
    1
    ヒトに対して発ガン性を示す物質
    2A ヒトに対して発ガン性を示す可能性がある(非常に高い)
    2B ヒトに対して発ガン性を示す可能性がある
    3 ヒトに対する発ガン物質として証拠が不十分
    4 おそらくヒトに対する発ガン物質ではない
    NTP(米国国家毒性計画)
    ヒトに対する発ガン物質
    ヒトの発ガン物質であると疑われる


ガン以外の毒性影響も

     PCBは、体内のホルモンの働きと同じ働きをしたり、阻害することによって、ホルモンの働きを攪乱する環境ホルモン(外因性内分泌攪乱物質)の疑いが強い物質です。環境ホルモンは、神経系や免疫のバランスも崩します。そのため免疫の攪乱により、肺炎やウイルス性の病気にかかりやすくなる可能性が指摘されています。また神経系攪乱により、発達過程に影響することが予期されます。実際に、PCBで汚染された五大湖の魚を食べた親から産まれた子どもの知能指数が低かったという報告や、台湾の油症患者に、知能指数の低下や行動障害が観察されているのです。
     PCBの中でも、特にコプラナPCBと呼ばれるものは、ダイオキシンと同じように平面の構造を持つため、ダイオキシンと同様の毒性を示します。生殖・発生毒性もあり、流産、生後体重の低下、口蓋裂のような催奇形性などが報告され、子宮内膜症との関連も疑われています。

      このように、PCBは、危険な物質であるにもかかわらず、難分解性という性質を持つため、一度環境中に出ると残留してしまいます。そして私たちだけではなく、何代にも渡って影響を及ぼします。 このまま、PCBの汚染が続くと、未来の世界を担う子ども達はどのようになってしまうか心配です。それは、ヒトだけではなく、地球上の全ての生物にいえることです。今からでも、PCBの汚染を止める必要があります。
    イラスト:親子


 
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