国際会議
コーデックス・第3回バイオテクノロジー応用食品特別部会
(横浜)速報 -3月4日-
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本日のまとめ

追跡システムの議論は先のばし。
妥協・合意は短時間ではムリだと参加者のほとんどが感じている。

本日は、議題5aの「組換えDNA植物由来食品に関する安全性評価ガイドライン」の
パラグラフ1の議論の最中で終了時間となり、明日、続きを議論することとなった。

10:00 開会、開会の挨拶など
10:40 議事の採択
10:50 他のコーデックス会議、他の国際機関からの報告など
11:15 「原則案」についての議論スタート
13:10〜昼食
15:00 「原則案」の続き
16:45〜休憩
17:05 「原則案」の続き
17:45 「原則案」についての議論終了
17:46 「組換え植物のガイドライン」についての議論スタート
18:30 終了

 

<本日の印象・感想>

会場が第1回、2回の幕張から横浜に変更され、一般傍聴・マスコミ席が、別室ではなく会議室の後部に設置された。第2回までは、一般傍聴者とマスコミは、別室でモニターしか見られなかったため、会場の雰囲気がつかみにくかった。今回はこれが改善され、公開性という意味でも大きく前進したと感じた。

私たち日本子孫基金は、コーデックスを「公開」するよう、日本政府に求めてきたが、これに政府が少しでも答えてくれたことを、嬉しく思う。今後のさらなる「公開性」のため、コーデックス国内委員会(事前の公聴会)などの開催も求めていきたい。

本日は、朝、やや冷え込む中、日本のNGOによる遺伝子組換え食品反対のデモが会場前の広場で行われ、多くの政府代表・NGOが注目していた。日本の消費者の意見を世界に伝えることができていたのではないかと思う。

予定通り会議は10時からスタートした。会議の内容は、時折、議長が「デジャブー」を感じると発言するほど、昨年と同じような議論がされることが何度もあった。特に、「追跡システム」に関して、依然として議論が平行線をたどっているのは、とても、歯がゆい思いがする。日本で起きた狂牛病のケースを考えても、「追跡システム」が食の流通に必要なことは明らかである。今回の会議で、なんとか結論に達することが望まれる。

 

■追跡システム

追跡システムは、「バイオテクノロジー応用食品のリスク分析に関する原則案」のパラグラフ21に、[リスク管理は追跡システムを含んでも良い]と記述されている。このパラグラフを文書に入れるか入れないか、第1回、第2回の会合で合意に達しなかったため、どうするかまだ決まっていないことを表す[ ]括弧書きになっている。

まず、コーデックス事務局のDr.ランデルが、トレーサビリティーという用語はISOで使われている用語であること、コーデックス全体としては、一般原則部会が、一般的な追跡システムについては担当することになっていること、などを説明した。

議論の口火を切ったのは、アメリカだった。アメリカは、「組換え食品に追跡システムを適用することの、正当な理由はない。パラグラフ21を削除すべき」と発言。それにすぐさまスペインが、EUの議長国として反論。「パラグラフ21はそのまま残すべきであり、EUとしては、パラグラフ21を、こう書き換えたい。『リスク管理は追跡システムを含んでも良い。以下の理由:ヒトの健康へのリスクが判明した場合に市場から撤去するため・パラグラフ20にあるような特定の環境での市場化後のモニタリングをサポートするため・表示の支援のため・特定の食品のIP整備のため』」

その後、各国が意見を応酬した。その応酬の中で、カナダが「パラグラフ21を削除して、すぐ前のパラグラフ20に、リスク管理のツールの1つとして、「製品のトレース(trace of products)と書くのはどうか」と提案。各国がどの意見を支持したかは以下の通りである。

削除を支持したのは、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、タイ、インドネシア

削除しすぐ前のパラグラフに「製品のトレース」と書くことを支持したのは、アメリカ、タイ、オーストラリア、ICGMA(企業NGO)、クロップライフ(企業NGO)、CRN(企業NGO)、IUBS(研究者NGO)、BIO(企業NGO)

削除せず[ ]に入れたまま残すことを支持したのは、オランダ

削除せず[ ]をはずすことを支持したのは、インド、ノルウェー、CI(NGO)、ICA,(NGO)、49パラレル(NGO)、グリンピース(NGO) 

削除せず[ ]をはずし・EUの書き換えを支持したのは、スペイン、 フランス、ドイツ、ベルギー、IACFO

見ての通り、参加国は2つに割れている。片方には、追跡システムにかかるコストや、組換え食品にだけなぜ特別に追跡システムが必要なのか、などを理由に、追跡システムという言葉自体をこの部会から抹殺したい、アメリカやカナダ、アルゼンチンなど組換え食品の生産国・企業NGO・そしてブラジル、インドネシアなど途上国。もう片方には、消費者の健康を守ることが大切であり、よく分からない部分の多い組換え食品には、予防原則を取り入れ、何か起きてしまう前に追跡システムを整えるべきだとする、ヨーロッパ諸国と・インド・消費者や環境NGOである。

1時間に及んだ議論の末、議長が下した判断は、削除せず[ ]に入れたまま残す、だった。追跡システムについては、この第3回バイオ特別部会で、時間が余れば話し合い、もし時間がなければ、来年の第4回(最終回)に持ち越すこととなった。

 

■議題4「バイオテクノロジー応用食品のリスク分析に関する原則案」

タイトルに関して、「バイオテクノロジー応用食品」の部分を「遺伝子組換え・操作食品」に変えるべきというインドの発言や、「バイオテクノロジー応用食品のリスク分析の適用に関する原則案」に変えるべきというカナダの発言があったが、もとのまま、変えないほうがいいという国が多かったため、そのまま、変えないことになった。

■IACFOが発言、またはコメントを送付した点について

●パラグラフ21::[リスク管理は追跡システムを含んでも良い]

IACFOは、パラグラフ21の〔 〕をとり、スペイン(EU)より出されたテキストを加えることを支持すること、追跡システムは消費者のために重要な概念であることを発言した。

●パラグラフ25::バイオテクノロジー応用食品における安全性や栄養面でのリスクは、一貫したアプローチにより特徴を明らかにし、管理されなければならない。バイオテクノロジー応用食品におけるリスクの許容レベルは、すでに市場に出回っている類似の従来の食品と一貫していなければならない。

IACFOは、食品の前に「従来の」を加えることを提案する。高い安全性レベルを保証するため、リスクの許容レベルは、長期にわたる使用の歴史があり安全に消費されてきた食品と一貫していなければならない。したがって、バイオテクノロジー応用食品に許容されるリスクは、市場に出回っている類似の従来の食品と一貫していなければならない。

この発言に、フランス政府とNGOグリンピースのサポートを得た。しかし、その他の国も、いくつかの変更を加えることを発言したため、IACFOの発言も考慮に入れられ、以下のように、変更された。

バイオテクノロジー応用食品と、類似の従来の食品の、非正当なリスクの違いが消費者に示されることは避けるべきである。

■議題5a 「組換えDNA応用技術応用植物に関する安全性ガイドライン」
本日は、議題5まですすめる予定ではなかったが、追跡システムなど重要な議論を後に残しているため、少しでも時間を後に残すため、定刻の6時を過ぎても、議題5に進むことになった。しかしながら、パラグラフ1から、さまざまな意見が出て、そのほとんどが事前に記述した文書として提出されていないため、多くの参加者は、混乱してしまった。そこで、意見がある各国・機関は、日本のコーデックス事務局に、文書として提出することを確認し、明日につなげることとした。

 
議長団   会議開始直後の30分間、マスコミの撮影が許可された

▲19:00〜21:00、会議場に隣接するインターコンチネンタルホテルにて、日本政府主催のレセプションが開かれた。明日、明後日の議論に向けて、各国・各団体代表は、お互いの出方を探ったり、戦略を立てるなどしていた。


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