国際会議
コーデックス・バイオテクノロジー・食品の安全性に関する国際シンポジウム
速報-3月13日-
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「バイオテクノロジー・食品の安全性に関する国際シンポジウム」

特別部会に先駆けて、幕張の国際会議場にて「バイオテクノロジー・食品の安全性に関する国際シンポジウム」が開かれた。このシンポジウムは、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が主催、ILSI(国際生命科学協会)が協力、日本の農林水産省、厚生省が資金提供をして開かれた。  

特別部会に参加する政府代表団、およびオブザーバーが招待されたため、IACFO代表として、日本子孫基金の遠藤、熊澤も参加したので報告する。

○○○○○○○報告○○○○○○○

このシンポジウムの目的は、「特別部会に参加する代表団に、遺伝子操作食品の生産に関する最新の科学技術、安全性評価、および遺伝子操作食品に対する賛成反対などの消費者態度などについて、知らせること」。シンポジウムは、10時から5時半まで行われ、およそ参加者は約260名(コーデックスに参加する政府代表団、NGO、その他日本の政府関係者、マスコミ、一般傍聴を含む)が参加した。各国政府代表団は明日から来る人が多いようで、シンポジウムの参加者は日本人が多いようだった。

<感想>

協力団体が推進派のILSIのため、参加する前から予測はされたものの、「実質的同等」の概念の重要性が繰り返されるなど、「推進派」よりのシンポジウムだった。 

「実質的同等」とは「導入された遺伝子の特性が良くわかっていて、元の食品と同程度に無害であると考えられる場合は、組み換えられた食品の安全性はもとの食品と同等に安全と考えられる」というものである。

この「実質的同等」概念は、科学的ではなく、本来、安全性評価に使われるべきものではない。遺伝子操作食品の安全性を科学的に確認できないので、推進派の企業や政府が、作り出した概念であることを念頭に置く必要がある。(「実質的同等」への批判など詳しいことは、本「遺伝子操作食品の避け方」に記述)

このシンポジウムの目的の一つにあげられていた「遺伝子操作食品に対する賛成反対などの消費者の態度などについて」は科学者が「消費者は科学的知識を知らない」と批判するだけであった。消費者がなぜ遺伝子操作食品について不安を抱き、反対運動を起こしているのかを理解するために、消費者代表をパネラーにすべきだっただろう。

また、「増え続ける人口増加に伴う食糧危機を救うには遺伝子操作しかない」という論調(ISAAA,クリーブ・ジェイムス氏)などの発言も、食糧危機の第1の問題は、食糧の絶対量が足りないという「生産」の問題ではなく「分配」の問題であることを無視した、非常に偏った意見であり、気になった。 特別部会の直前にFAO/WHOが開催するシンポジウムが、政府代表に与える影響は非常に大きいだけに、偏ったシンポジウムには異議を唱えたい。

○シンポジウムのプログラムおよび講演者は以下のとおり○

<セッション1>食品の安全性:ハザード(危害)、リスクとそれらの認知

「ハザードとリスクの違い」 北里大学薬学部、林 裕造博士

「リスクの認知と食品安全に対する期待」 筑波大学、ダリル・メイサー博士

<セッション2> バイオテクノロジー応用食品

「遺伝子操作作物の開発」メキシコ、ルイス・ラファエル・ヘレラエストレラ博士

「遺伝子操作作物の特徴・変質と展開」 ISAAA、クリ−ブ・ジェイムス博士

「組換え遺伝子及びそのたんぱく質の検出」 EU共同研究センター、エルケ・アンクラム博士

昼食

<セッション3>食品中に存在するDNAとタンパクの検出方法

「FAO/WHO バイオテクノロジー応用食品の安全性評価専門家会議による提言」1993年のOECDによる実質的同等に関する報告、実質的同等を使用するための基準、1996年FAO/WHO専門家会議による勧告など。イギリス、WHO顧問、デイビッド・A・ジョナス博士

「消化されたDNAのゆくえ」DNA消化の生化学ほ乳類の内臓と腸内細菌がDNAを摂取する可能性摂取のデータ、内臓内の微生物による抗生物質耐性遺伝子のトランスファー、家畜に飼料として遺伝子操作作物を与えた場合の影響は非常に複雑なプロセスで、まだ安全性が証明されていないことが明らかにされた。イギリス、リーディング大学、デイビッド・E・ビーバー博士

「バイオテクノロジー応用食品に関連する毒性評価」Btタンパクを例に、組み込まれたタンパクが毒性があるかどうかを確かめるプロトコルを説明する。食品そのものの自然毒、人が食してきた歴史、動物の純粋タンパクなどの分子比較。長期試験のアプローチ、えさを与える動物実験の限界。ドイツ、ミュンヘン工科大学、カール・ハインツ・エンゲル博士

「バイオテクノロジー応用食品に潜在するアレルギー性の評価」食品アレルギー、アレルゲンについての免疫学的理解。遺伝子操作に反対する消費者の不安にきちんと答えていない発言がめだった。「アレルギーを起こす可能性のあるタンパクは、ほんの限られたものにしかすぎず、ほとんどはアレルギーを起こさず安全だ」(事実:アレルギーの原因はほとんどまだ解明されていない。だから消費者は不安に思っているのだ。ほんの限られたもので、死ぬ人もいるのだから。)「ブラジルナッツのアレルゲンが大豆に移行したという件を、遺伝子操作の反対派は、アレルギーの危険性を示す例として使っている。しかし、あれは、アレルギーのリスクがあることを科学的に商品化・販売前に差し止めることが可能であることを示した、安全性チェックがうまくいっていることを示す例なのだ」(コメント:ナッツ類はアレルゲンになることが非常に多いことがすでに分かっている例。だから、厳重にチェックがされたため、商品化前にリスクが証明された。アレルゲンになるかどうかもわかっていないものにも、同様の厳しいチェックをしているのだろうか???)「アレルギーを起こす人は少数で、世の中にピーナッツアレルギーを起こす人がいるから、ピーナツを作るのをやめましょう、とはならない。遺伝子操作食品も、アレルギーを起こす人がいるからというだけで、やめましょうとはならない」との発言もあった。アメリカ、トュレーン大学、サミュエル・レーラー博士

「バイオテクノロジーによって作られた食品の規制」実質的同等の適用、「絶対的な安全性」と、「ほぼ安全である」ことの比較、販売後の政府など規制当局の役割。 カナダの遺伝子操作食品の規制について簡潔に紹介したわかりやすいプレゼンテーションであった。カナダ、カナダ保健省、カレン・マッキンタイヤ−女史

 

*ILSIは、1987年にアメリカの食品産業によって設立された非営利機関のひとつであり、北アメリカ、ヨーロッパ、日本、オーストラリアに支部がある。200の民間企業と300人あまりの科学者が所属し目的は、FDAやカナダ、EUにおける関連監督機関と学術団体と共同で活動してきた。本部はジュネーブ。目的は研究機関相互の連携をはかる、安全性問題の解決のために食品の原料に関する研究を指揮監督すること、世界規模で、食品規制の整合化を促進すること、栄養科学を発展させることである。89年4月に、FAOからSpecialized Consultative Status(特別顧問機関としての地位)を獲得している。Nutrition Reviewsという月刊誌を発行しており、95ヶ国に配布され、7ヶ国語に翻訳されている。遺伝子操作食品に関しては推進派で、コーデックスに古くから関わっているNGOである。東京に日本ILSIの事務所があり、今回のシンポジウムの実行は、日本ILSIが行っている。

ワークショップの様子

 

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