国際会議
コーデックス・第28回表示部会
(カナダ・オタワ)-2000年5月9日〜12日-



-IACFOの意見書-

 

コーデックス食品表示部会 CX/FL 00/9

 

健康表示に関するIACFOのポジション・ペーパー (日本語訳・要約)

 

IACFOは、健康表示を許可するコーデックス基準は設けるべきではないと考えている。理論的には、健康表示は健康を保つための情報を消費者に提供するものであり、消費者がそれによって享受する利益は確かにある。しかし、健康表示に関する規制を設けた国では、食品会社と誤解を生む適切でないクレームを十分に取り締まれず、山ほどの問題を抱えているのが現状である。

 

アメリカの健康表示に関する規制の問題

1990年にアメリカで健康表示が許可された際、クレームはFDAによって事前に認可を受けなければならず、また、例えば「飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事は、心臓病のリスクを減らす可能性があります」のような、食事と病気の一般的な関係を示すものだけに限られていた。

しかし残念なことにこの規制は年々緩和され、現在の規制では健康表示は、

1.FDAの事前認可が必要ない
2.「十分な科学的根拠」がなくても表示できる
3.食事と病気の一般的な関係を示すものだけではなく、具体的な食品の効果を表すものでも許可される
4.法の抜け穴が食品会社に利用され、健康表示よりも規制の緩い、構造・機能表示が市場に氾濫している。(例:脂質の多い食品は、健康表示の許可は下りないが、構造・機能表示はできてしまう)

など、規制力のないものとなっている。

 

日本の健康表示に関する規制の問題

日本の健康表示に関する規制も、十分に機能しているとは言えない。特定保健用食品は、厚生省の認可が義務付けられているが、この特定保健用食品制度にも多くの問題がある。

1.食品会社の多くは、体に良いとされる成分が含まれていることのみを表示・強調することによって、健康表示をする際には義務である認可の過程を省略している


2. コレステロール、塩分、糖分など、摂り過ぎると体に良くない非健康的な成分が多く含まれる食品であっても、特定保健用食品制度に認可されてしまう


3. 規制がほとんど機能しておらず、違法な表示が多い。薬事法、食品衛生法、栄養改善法の基準をきちんと満たした健康食品がほとんどない


日本では、科学的根拠のない、誤解を生むクレームが市場に氾濫しているのである。

 

これらアメリカと日本の状況を見ればわかる通り、今の時点で健康表示を許可する国際規格を設けることは時期尚早である。消費者が健康表示を要求しているという根拠もない。さらに、栄養成分表示さえ義務化されていない今、健康表示を許可するべきであろうか。いくつかの食品に健康表示を許すよりも、全ての食品に栄養成分がきちんと表示された方が、消費者は医師や栄養師のアドバイスを実行したり、自分の食生活を改善する上で、役に立つはずである。(現時点では、アメリカしかこの栄養成分表示を義務付けていない。)

IACFOは、アメリカと日本の現状が改善され、コーデックス加盟国が参考にできるような状態になるまで、また、栄養成分表示がコーデックスで義務化されるまで、現在コーデックス表示部会で進んでいるステップを3でとどめて置くべきだと考える。コーデックス委員会はその間、健康産業界の圧力を受けることになるであろうが、健康食品の市場拡大ではなく、消費者の健康維持こそが、コーデックス委員会が最も考慮すべき点であることを、常に意識するべきである。